住み替えの資金計画は、何から始めればいいのか迷いやすいものです。
売却やローン、新居の費用がからみ合い、お金の話が頭の中で散らかりがちです。
この記事では、売却見込み額を起点に、元手から新居予算までを4ステップで組み立てる方法がわかります。
住み替えの資金計画は4ステップで組み立てる
住み替えの資金計画は、売却見込み額を起点に「元手」と「予算」を順番に足し引きすれば組み立てられます。
難しく構える必要はありません。売れる金額を出発点に、手元に残るお金と新居にかけられる金額を4つのステップで埋めていくと、ばらばらだった資金の話が1枚の計画にまとまります。
| 順番 | 出すもの |
|---|---|
| 起点 | 売却見込み額 |
| STEP1 | 元手(手元に残る軍資金) |
| STEP2 | 借入の上限 |
| STEP3 | 新居の予算 |
| STEP4 | 資金繰り(売り先行・買い先行) |
資金計画とは「使える元手」と「予算」を決める作業
資金計画とは、住み替えに使える「元手」と、新居にかけられる「予算」という2つの数字を決める作業です。
元手は、いまの家が売れたお金から住宅ローンの残りや手数料を引いて、手元に残る軍資金を指します。予算は、その元手に貯金や新たな借入を足して、新居の購入にあてられる上限額のことです。
この2つさえ決まれば、物件探しもローン選びも同じ土台の上で考えられます。逆にどちらかが曖昧なままだと、気に入った家が予算に収まるのか判断できず、検討が前に進みません。
すべての起点は「いくらで売れるか」(売却見込み額)
資金計画のすべての数字は、いまの家がいくらで売れるかという売却見込み額から始まります。
住み替えでは、家が売れたお金がそのまま次の住まいの主な原資になります。そのため起点となる売却見込み額が仮のままだと、元手も予算も連動して仮になり、計画全体がぐらついてしまいます。
売り出す前の段階でも、おおよその見当をつけること自体はできます。ただし正確な金額は査定を受けて初めて固まるため、ここでは「仮の起点」と置いたまま先へ進めば十分です。
モデルケースで完成形を先に確認する
完成形を先に見ておくと、各ステップで自分の数字を埋める作業がイメージしやすくなります。
ここでは持ち家からの住み替えを考えるひと組の世帯をモデルケースに、これから4ステップで何が埋まるのかを空欄の表で示します。数字はすべて仮ですが、自分の状況に置き換えながら読むと計画の全体像がつかめます。
下の表が、最後に完成する予算表の骨組みです。いまは空欄でも、各ステップを終えるたびに上から順に数字が入っていきます。
| 項目 | 売り先行 | 買い先行 |
|---|---|---|
| 売却見込み額 | ー | ー |
| − 住宅ローン残債 | ー | ー |
| − 売却の費用・税 | ー | ー |
| = 元手 | ー | ー |
| + 自己資金 | ー | ー |
| + 借入の上限 | ー | ー |
| = 新居の予算 | ー | ー |
| 資金繰りで増える費用 | 仮住まい費用 | ダブルローン期間の負担 |
表の右側を売り先行と買い先行の2列に分けているのは、同じ予算でも資金繰りの負担が両者で変わるからです。元手や予算の計算は共通ですが、資金が動くタイミングで必要な現金とリスクに差が出ます。
【STEP1】売却見込みと残債で元手を把握
元手とは、家が売れたお金から住宅ローンの残りや諸費用・税を引いて、手元に残る軍資金のことです。
まずはこの元手がいくらになるかを概算でつかみます。ここでは1円単位まで詰めず、売却見込み・残債・費用税の3つをざっくり引いて、計画の土台となるおおよその金額を出します。
自宅の売却見込み額の概算を出す
売却見込み額は、近隣の成約事例や公的な価格情報から、自分でもおおよその数字をつかめます。
一番手軽なのは、固定資産税の通知に載っている土地の評価額からの逆算です。土地の固定資産税評価額は公示価格の7割ほどを目安に決められるため、評価額を0.7で割り戻すと公示水準の見当がつきます。建物は築年数とともに価値が下がるので、土地の数字を軸に、近隣の売り出し事例を重ねて補正します。
もうひとつは、不動産会社の机上査定を使う方法です。物件情報をもとに簡易に出してもらえますが、室内の状態までは反映されないため、ここで出る数字も「おおよその目安」にとどまります。
正確な金額は、実際に物件を見てもらう訪問査定を経て初めて固まります。この段階では幅を持たせて低めの数字を起点に置くと、後の計画が崩れにくくなります。
住宅ローン残債を正確に把握して引く
売却見込み額が出たら、そこから住宅ローンの残債を引きます。
残債は推測せず、正確な数字を確認します。借入先から毎年届く返済予定表か、金融機関で取れる残高証明書を見れば、いまの残りがそのまま分かります。
気をつけたいのは、繰上返済の予定や、売却時点での経過利息です。売る月によって残債は少しずつ変わるため、売却を見込む時期の残高で計算します。
諸費用・税を概算で引き、元手のあたりをつける
最後に、売却にともなう諸費用と税を概算で引くと、元手のあたりがつきます。
売却で必ずかかるのが仲介手数料です。売買価格が400万円を超える場合は「価格×3%+6万円+消費税」が上限の目安で、これだけで数十万円の規模になります。
このほか、抵当権抹消の登記費用や契約書の印紙税などが加わります。ここでは内訳を1つずつ積み上げず、売却価格の数%をまとめて引いておけば十分です。
売却益にかかる税は、自宅であれば3,000万円の特別控除で課税されないケースが多いものの、適用には要件があり一概には言えません。気になる場合は早めに試算し、個別の判断は税理士など専門家に確認すると安心です。
モデルケースで計算すると、売却見込み2,800万円から残債1,500万円と費用・税の概算100万円を引いて、元手は約1,200万円です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却見込み額 | 2,800万円 |
| − 住宅ローン残債 | 1,500万円 |
| − 売却の費用・税(概算) | 100万円 |
| = 元手 | 約1,200万円 |
【STEP2】返せる額から借入の上限を決める
借入の上限は、「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から逆算して決めます。
金融機関が貸せる額と、家計が返せる額は別物です。ここでは毎月の返済余力を起点に、現実的な借入の上限を自分の手で組み立てます。
毎月いくらなら無理なく返せるかを決める
出発点は、毎月いくらまでなら無理なく返せるかという返済余力です。
返済余力は、手取り収入から毎月の生活費と将来の備えを引いた残りで考えます。いま家賃やローンを払っているなら、その額に無理なく上乗せできる範囲が一つの目安になります。
ここで見落としやすいのが、これから増えていく支出です。教育費や車の買い替え、老後への積み立てを先に確保したうえで、住宅に回せる額を決めます。
賃料と返済額を同じ感覚で考えるのも危ういところです。持ち家では固定資産税や管理費、修繕積立金が新たに加わるため、その分を返済額から差し引いておきます。
モデルケースでは、こうした支出を引いた返済余力から、毎月の上限を約9.8万円に置きました。
返せる額と完済年齢から借入可能額を出す
毎月の返済上限が決まれば、そこから借入可能額に直せます。
借入可能額は、毎月の返済額に加えて、金利と返済期間で決まります。同じ月10万円の返済でも、期間が長いほど借りられる総額は増えます。
ただし返済期間は、完済時の年齢で頭打ちになります。多くの金融機関は完済時を80歳ごろまでとしているため、借入時の年齢が上がるほど組める期間は短くなります。
金利は固定か変動かで毎月の返済額が変わり、借入可能額にも影響します。モデルケースでは月9.8万円の返済余力をもとに、借入の上限を約3,000万円と置きました。
老後資金・教育費と両立するか確認する
借入の上限が出たら、それが老後資金や教育費と両立する金額かを確かめます。
借りられる上限まで使うと、住宅以外への備えが手薄になりがちです。とくに50代以降の住み替えでは、返済が老後の生活に食い込まないかを優先して見ます。
退職金をあてにして完済する前提を組み込みすぎるのも避けたいところです。全国の利用実態を見ても、中古住宅では住宅価格が世帯年収の5倍前後にとどまる例が多く、上限いっぱいを狙う必要はありません。
出典:住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査」
モデルケースでは、毎月の返済余力9.8万円から借入の上限を約3,000万円と見積もりました。STEP1の元手1,200万円と合わせ、計画の柱が2本そろいました。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 元手 | 約1,200万円 |
| 借入の上限 | 約3,000万円 |
【STEP3】元手+自己資金+借入で予算を組む
元手・自己資金・借入の3つを合算すると、新居にかけられる予算が決まります。
ここまでの数字がそろえば、計画はいよいよ予算表として形になります。合算で総額を出し、そこから購入時の費用を差し引いて、物件にかけられる金額を確定します。
元手・自己資金・借入を合算して予算を出す
新居の予算は、元手に自己資金と借入の上限を足した合計額です。
自己資金は、いまの貯金のうち住宅に回せる分を指します。生活防衛のための資金や当面の教育費まで使ってしまわないよう、手元に残す分を先に分けておきます。
モデルケースでは、元手1,200万円に自己資金300万円と借入3,000万円を足し、予算は4,500万円となりました。これが、物件と諸費用の両方をまかなう総額です。
購入諸費用や引っ越し代を予算に含める
予算の全額を物件価格にあてられるわけではありません。
購入時にも、仲介手数料や登記費用、ローンの事務手数料、引っ越し代がかかります。売却と購入の時期がずれる場合は、仮住まいの家賃も予算に含めておかないと、後から資金が足りなくなります。
モデルケースでは、これらの費用に約350万円を見込みました。残りの約4,150万円が、物件価格にかけられる上限です。
資金が足りないときの組み替え方
予算が希望に届かないときも、あきらめる前に組み替えの余地があります。
元手や自己資金が少なくても、住み替えそのものを断念する必要はありません。売却額でローンを返しきれない場合でも、残った分を新しいローンに上乗せできる住み替えローンという選択肢があります。
いまのローン残債が売却額を上回る、いわゆるオーバーローンの状態でも、対応できる方法はあります。ただし借入が膨らむ分だけ毎月の返済は重くなるため、無理なく返せる範囲に収まるかを必ず確認します。
借入を増やす以外に、予算側を動かす手もあります。希望エリアや築年数の条件を少しゆるめたり、売り出し時期を見直したりすると、予算と希望の差は縮まります。
どの方法を選ぶかは、いつ売っていつ買うかという段取りとも関わります。資金が動く順番を整理すると、無理のない組み替えが見えてきます。
これでモデルケースの予算表が1枚にまとまりました。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却見込み額 | 2,800万円 |
| − 住宅ローン残債 | 1,500万円 |
| − 売却の費用・税(概算) | 100万円 |
| = 元手 | 1,200万円 |
| + 自己資金 | 300万円 |
| + 借入の上限 | 3,000万円 |
| = 新居の予算 | 4,500万円 |
| うち購入諸費用・引っ越し等 | 約350万円 |
| 物件価格の上限 | 約4,150万円 |
【STEP4】売り先行・買い先行で資金繰りを設計
同じ予算でも、いつ売っていつ買うかで、必要な現金とリスクは変わります。
予算が決まっても、お金が動く順番まで考えないと計画は回りません。売り先行と買い先行それぞれで資金繰りがどう変わるかを押さえ、自分に合う進め方を選びます。
売り先行は元手が固まってから動ける
売り先行は、先に自宅を売って元手を確定させてから新居を買う進め方です。
手元に入る金額が見えてから動けるため、予算が狂いにくく、資金面では堅実です。住宅ローンが二重になる心配もありません。
一方で、売却から購入までに間が空くと、仮住まいが必要になります。その家賃と二度の引っ越し代を、あらかじめ予算に見込んでおきます。
買い先行は先に資金が必要になる
買い先行は、先に新居を決めてから、いまの家を売る進め方です。
気に入った物件を逃さずに動ける反面、購入資金を売却前に用意する必要があります。自己資金が厚いか、つなぎの資金を確保できる場合に取りやすい方法です。
注意すべきは、いまの家が売れるまでの期間です。旧居のローンと新居のローンが重なるダブルローンの状態になり、売却が長引くほど負担とリスクは大きくなります。
時間差を埋める方法と向き不向き
売却と購入の時間差は、資金面の工夫で埋められます。
代表的なのが、つなぎ融資です。売却代金が入る前に購入資金を一時的に借り、売れた時点でまとめて返す仕組みで、買い先行の資金不足を補えます。
売却と購入の決済日を同じ日にそろえる方法もあります。仮住まいもダブルローンも避けられますが、両方の段取りがそろう必要があり、調整の難しさは残ります。
どちらが合うかは、資金の余裕と、住みながら売れる状況かで分かれます。資金にゆとりがあれば買い先行、確実さを優先するなら売り先行が選びやすいでしょう。迷う場合は、売却の見込みがどれだけ固いかで判断します。
モデルケースの予算は同じでも、進め方によって資金繰りは変わります。
| 進め方 | 追加で必要になるもの | 主なリスク |
|---|---|---|
| 売り先行 | 仮住まいの家賃・引っ越し代(約70万円) | 仮住まい期間が延びると費用が増える |
| 買い先行 | 売却までのダブルローン負担 | 売却の長期化で負担とリスクが増える |
資金計画は売却見込みの確定から動き出す
予算表ができたら、次の一歩は、起点となる売却見込み額を査定で確定させることです。
ここまでの計画は、売却見込み額が仮のままでは動き出しません。査定で起点を本物にし、計画を専門家の目で確かめれば、安心して住み替えに進めます。
査定で売却見込み額を確定させる
計画を動かす最初の一歩は、査定で売却見込み額を確定させることです。
これまで概算で置いてきた起点を、実際の査定で本物の数字に置き換えます。ここが固まると、元手から予算までの数字が一気に現実味を帯びます。
査定額は会社によって差が出るため、複数社に依頼して比べると相場感がつかめます。一括査定を使えば、一度の入力で複数の会社へまとめて依頼できます。
完成した計画を専門家に確認する
数字がそろったら、計画を専門家の目で一度確かめます。
自分で組んだ計画は、思い込みや見落としが残りがちです。ファイナンシャルプランナーや不動産会社に当てると、返済の無理や抜けていた費用に気づけます。
とくに税や住宅ローンの条件は変わりやすいため、最新の情報を持つ専門家への確認が安心につながります。
計画が回らないときの次の一手
査定の結果、計画が予算どおりに回らないとわかっても、打つ手はあります。
売却見込みが想定より低ければ、予算の前提を見直します。希望エリアや物件の条件、住み替えの時期をずらすことで、計画は組み直せます。
元手が思ったほど残らない場合は、資金の調達方法を変える手もあります。住み替えローンやつなぎ融資など、足りない分を補う選択肢を一度検討してみてください。
どの状態であっても、まずは正確な売却見込み額を知ることが、次の行動を決める土台になります。
まとめ:売却見込み額を起点に、4ステップで1枚にまとめる
住み替えの資金計画は、売却見込み額という1つの起点から元手・借入の上限・予算・資金繰りの順に組み立てれば、難しく考えなくても1枚にまとまります。
大切なのは、借りられる額ではなく無理なく返せる額から考え、足りないときの組み替えや進め方の違いまで含めて見通しておくことです。
計画の精度は、起点となる売却見込み額をどれだけ正確につかめるかで決まります。まずは査定で今の家の価値を確かめ、必要に応じて専門家にも相談しながら、安心して住み替えを進めてください。

