相続した実家が兄弟との共有名義になり、売りたいのに話が進まず悩んでいませんか。
「1人でも反対したら?」「自分の持分だけなら売れる?」と、選択肢の多さに迷う方も多いはずです。
この記事を読めば、3つの方法から自分に合うルートが見つかり、次の一手まで決められます。
共有名義の不動産を売却する3つの方法と選び方
共有名義の不動産も、売却はできます。
ただし、売却の進め方は「家そのものを売るのか、自分の持分だけを売るのか」と「ほかの共有者の同意を得られるか」の2点で変わってきます。まずは3つの方法を並べ、自分が今どの位置にいるのかを確かめるところから始めましょう。
| 売り方 | 同意の要否 | 想定価格 | 手間・期間 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 全体を売る | 共有者全員 | 市場価格に近い | 全員の足並みをそろえる | 全員が売却に前向き |
| 持分だけ売る | 自分のみ(不要) | 相場より下がりやすい | 比較的早い | 同意が得られない/早く抜けたい |
| 共有を解消して売る | 段階による | 解消方法で変わる | 長くなりやすい | 話し合いが行き詰まった |
共有名義の不動産を売る3つの方法(全体・持分・共有の解消)
共有名義の不動産を売る道は、大きく3つに分かれます。
ひとつは、共有者全員で家そのものを売る方法です。市場価格に近い値で売りやすい半面、1人でも反対すると前に進みません。
次に、自分が持つ持分だけを売る方法があります。ほかの共有者の同意を得る必要はないものの、買い手も価格も限られます。
そして、共有状態をほどいてから売る方法です。持分を当事者どうしで買い取り合うか、共有物分割請求という手続きを使い、単独名義に近づけてから売却します。
全体を売るには全員の同意、自分の持分は単独で売れる
同じ「売る」でも、全体と持分では同意の要否が逆になります。
家そのものを売る行為は、共有物全体を手放す処分にあたります。共有者全員の財産をまとめて動かすことになるため、軽微な変更を過半数で決められるようになった2023年4月の改正後も、全体の売却には全員の同意が欠かせません。
一方、持分は共有者それぞれが持つ自分の財産です。自分のものを手放すだけなので、ほかの共有者に断りを入れなくても、自分の意思だけで売却できます。
出典: 法務省「令和3年民法・不動産登記法改正 新制度の概要・ポイント」
同意の状況と目的で決まる、あなたの売却ルート
自分がどのルートに進めるかは、「何を売るか」と「同意が得られるか」の組み合わせで見えてきます。
最初に確かめたいのは、売りたいのが家の全体か、自分の持分かという点です。全体を売りたいなら、ほかの共有者が賛成してくれるかどうかで道が分かれます。全員がまとまれば全体売却に進めますし、反対する人がいれば、共有を解消してから売る方法を検討することになります。
持分だけでよい、あるいは早く共有から抜けたい場合は、同意の有無にかかわらず持分の売却を選べます。急ぐ事情があるかどうかも、ルートを絞る判断材料になります。
下の流れに沿って、自分の現在地を確かめてみてください。
【自分のルートの見つけ方】
Q1. 売りたいのは「家の全体」か「自分の持分だけ」か
・持分だけ/早く抜けたい → 持分を売る
・全体を売りたい → Q2へ
Q2. ほかの共有者は売却に賛成しているか
・全員が賛成 → 全体を売る
・反対・話が進まない → 共有を解消して売る
共有者全員の同意で不動産全体を売却する
共有者全員の同意がそろえば、共有名義でも家全体を市場で売れます。
ここでは、共有者全員が売却に納得できている場合に取る方法をまとめます。共有名義ならではの同意の取り方や必要書類、代表者を立てるときの注意点に絞って見ていきます。
全体売却に必要な「全員の同意」と揃える書類
全体の売却は、共有者全員がそろって初めて動き出します。
家全体を売るのは共有物の処分にあたり、1人でも欠けると契約は成立しません。まずは全員が売却の方針で一致していることが出発点になります。
必要になる書類は、対象不動産の登記識別情報(権利証)、共有者全員の印鑑証明書と実印、本人確認書類です。それぞれの持分割合は、登記事項証明書で確認できます。
遠方や事情で立ち会えない共有者がいる場合は、委任状を用意すれば代表者が手続きを代行できます。委任状には売買契約や登記の権限を具体的に書き、印鑑証明書を添えます。
代表者を決めても、契約と登記には共有者全員が関わる
代表者を立てても、共有者全員が当事者である事実は変わりません。
売買契約や所有権移転登記では、各共有者が自分の持分を手放す当事者になります。代表者はあくまで手続きを束ねる窓口であり、責任や権利が1人に移るわけではありません。
売却後の確定申告も、共有者がそれぞれ自分の持分に応じて行います。代金を受け取る人も、税金を申告する人も、共有者ごとに分かれる点を押さえておきましょう。
最も高く売れる一方で、1人の反対で止まるリスク
全体売却は最も高く売れる半面、足並みがそろわないと止まります。
市場でそのまま買い手を探せるため、3つの方法の中では市場価格に近い値で売りやすい方法です。住宅ローンの残債も整理しやすく、手元に残る金額が大きくなりやすいのも利点です。
その一方で、全員の同意が前提になるため、1人でも反対すれば計画全体が止まります。相続で共有者が増えていたり、遠方や疎遠で連絡がつきにくかったりすると、同意を集める段階でつまずきがちです。
売却代金は、持分割合に応じて分けるのが基本です。誰がいくら受け取るかを早めに共有しておくと、後の行き違いを防げます。
自分の「共有持分」だけを売却する方法と注意点
自分の持分だけなら、ほかの共有者の同意がなくても単独で売却できます。
ここでは、ほかの共有者の同意が得られない、または共有から早く抜けたい場合の方法を扱います。自分の持分を売る仕組みと、価格や買い手、残る共有者への影響といった注意点を見ていきます。
自分の持分は、他の共有者の同意なく売却できる
自分の持分だけなら、ほかの共有者の同意がなくても売れます。
持分は各共有者が単独で持つ財産であり、その処分は本人の自由です。売却に反対されていても、連絡が取れない相手がいても、自分の判断だけで進められます。
ただし、売れるのはあくまで「自分の持分」だけです。家そのものが売れるわけではなく、残りの持分はほかの共有者のもとに残ります。
買い手の中心は「共有持分の専門買取業者」
持分の買い手は、共有持分を専門に扱う買取業者がほとんどです。
持分だけを買っても、その家を自由に使えるわけではありません。住みたい個人や投資目的の人にはメリットが乏しく、一般の市場ではまず買い手がつきません。
そこで主な引き受け手になるのが、共有持分の取り扱いに慣れた専門の買取業者です。買い取ったあとにほかの共有者と交渉する前提で、権利関係の複雑さを織り込んで価格を出します。
業者によって査定の精度や対応には差が出ます。1社で決めず、複数に当たって比べるほうが安全です。
相場より安くなる理由と、残された共有者とのトラブル
持分の売却は価格が下がりやすく、売ったあとに火種を残すこともあります。
価格が下がる一番の理由は、持分だけでは不動産を自由に使えず、転売も難しいことです。買い手のリスクが大きい分、全体を売る場合に比べて手取りは目減りします。
水準としては市場価格より大きく下がるのが一般的で、持分割合をそのまま掛けた金額にはならないことが多いです。少しでも条件を上げたいなら、複数の業者で査定額を比べるのが現実的です。
売却後は、面識のない第三者が新たな共有者として加わります。残されたほかの共有者にとっては見知らぬ相手と権利を分け合う状態になり、分割の請求が持ち込まれるなど、新たなトラブルに発展することもあります。
共有者と意見が割れたとき、共有を解消して売却する
共有者が反対していても、共有を解消すれば売却の道は残ります。
ここでは、当事者どうしで持分を買い取り合う方法と、裁判所に解消を求める共有物分割請求を扱います。穏やかな順から、最終手段までを順に見ていきます。
なお相続した不動産で遺産分割がまだ済んでいない場合は、共有物分割よりも先に、遺産分割で分けるのが原則です。
まず持分を買い取り合い、単独名義にしてから売る
いきなり裁判に持ち込む前に、当事者どうしの売買で名義を1人にまとめる道があります。
売りたい人がほかの共有者の持分を買い取るか、逆に自分の持分を共有者に買ってもらえば、不動産は単独名義になります。単独になれば、あとは普通の不動産と同じように売れます。
費用は買い取りの代金しだいですが、話し合いで済むぶん、関係をこじらせにくいのが利点です。当事者の間で価格の折り合いがつく場合に向いています。
話し合いが進まないときの共有物分割請求という最終手段
話し合いで解決できないときは、裁判所に共有の解消を求める共有物分割請求という手段があります。
共有者は、いつでも共有の解消を求められます。相手が話し合いに応じなくても、最終的には裁判所の判断で共有状態を終わらせられます。
手順は、まず当事者の話し合いから始まります。それでもまとまらなければ、裁判所に分割を求める訴訟へ進みます(間に調停を挟むこともあります)。
裁判所が命じる分け方は、現物で分ける方法、1人が取得して他の共有者へ代金を払う方法、売却して代金を分ける方法の3つです。2023年4月の改正で、この3つの類型が条文に整理されました。
出典: 法務省「令和3年民法・不動産登記法改正 新制度の概要・ポイント(共有物分割の見直し)」
分割請求は「売って分ける」結末が多く、費用と時間がかかる
共有物分割請求は「売って分ける」形に落ち着くことが多く、相応の負担を伴います。
土地のように線を引いて分けにくい不動産では、裁判でも売却して代金を分ける方法が選ばれやすくなります。買い手がつかなければ競売にかけられ、市場で売るより安くなりがちです。
訴訟には弁護士費用がかかり、解決まで半年から1年以上を要することも珍しくありません。早く確実に手放したい場合でも、時間の見込みは長めに考えておく必要があります。
加えて、裁判という形をとる以上、共有者との関係が決定的に悪くなることも避けられません。あくまで話し合いが尽きたあとの最終手段として捉えておきましょう。
状況別|共有名義の不動産の売却ルートの選び方
同意の状況と目的が分かれば、自分に合う売却ルートは2〜3案に絞れます。
ここまでの3つの方法を、自分のケースに当てはめて絞り込みます。同意の状況、売る対象、急ぎ具合の3点で見ると、進むべき道はおおむね2〜3案に定まります。
【自分の状況チェック】
□ ほかの共有者の同意は得られそうか
□ 売りたいのは全体か、自分の持分か
□ 名義(相続なら遺産分割)は確定しているか
□ どのくらい急いでいるか
全員が前向きなら全体売却へ(次の一手は査定で価格をそろえる)
全員が売却に前向きなら、迷わず全体売却に進むのが一番です。
この場合にまずやりたいのは、客観的な査定額を共有者全員で共有することです。「いくらで売れそうか」という共通の数字があると、誰が何をどう判断するかの土台ができます。
複数の不動産会社に査定を依頼し、その結果を共有者で見比べると、価格の目安と任せる会社を同時に絞り込めます。最初の一歩を数字からそろえることで、その後の話し合いが進めやすくなります。
温度差があるときは、いきなり結論を出さず順序を踏む
共有者の間で温度差があるときは、結論を急がず順番に進めるのが得策です。
最初から「売る・売らない」を迫ると、反発を招いて話がこじれます。まずは査定額という事実を共有し、現状を同じ目線で確認するところから始めましょう。
そのうえで折り合いがつかなければ、司法書士や宅建士など第三者を交えて話し合う方法があります。感情の対立も、専門家を挟むと事実をもとにした議論へ戻しやすくなります。
決裂・早く手放したいなら持分売却か共有物分割請求へ
合意の見込みが薄い、あるいは早く手放したいなら、持分売却か共有物分割請求が出口になります。
共有から早く抜けたい人は、自分の持分だけを売る方法を選べます。価格は下がりますが、ほかの共有者の同意を待たずに共有状態から離れられます。
話し合いそのものが成り立たない場合は、共有物分割請求で決着をつけることになります。時間と費用はかかるものの、第三者の判断で共有を確実に解消できます。
どのルートに進むとしても、「いくらで売れそうか」を把握することが共通の出発点になります。住み替えのトビラの一括査定なら、複数社の査定額を無料でまとめて比べられます。
まとめ:自分のルートを見極め、まず査定額の共有から
共有名義の不動産も売却できますが、取れる道は「何を売るか」と「同意を得られるか」で変わります。全体売却・持分売却・共有の解消という3つを、自分の状況に当てはめて選ぶのが近道です。
全員が前向きなら全体売却、同意が難しいなら持分売却や共有物分割という出口があります。どれが優れているかではなく、自分のケースにどれが合うかで選ぶことが大切です。
どのルートでも、まず「いくらで売れそうか」を把握することが共通の出発点です。住み替えのトビラの一括査定で複数社の目安をつかみ、判断に迷うときは専門家への相談もあわせてご検討ください。

