土地売却の税金はいくら?取得費と特例で手取りを試算する

土地を売ったときの税金は、売却額や取得費、使える特例しだいで大きく変わります。

相続した土地は取得費が分からず、いくら手元に残るのか不安になりやすい場面です。

この記事を読めば、自分の数字を当てはめて税額と手取りをおおよそ試算できます。

土地売却の税金は売却益が出たときだけかかる|全体像と3つの分かれ目

土地売却で税金がかかるのは、売った金額そのものではなく、売って利益(譲渡所得)が出たときだけです。

土地は建物と違って減価償却がなく、計算の形そのものはシンプルです。それでも税額は、取得費・使える特例・更地化という3つの要素で大きく変わります。順に押さえれば、自分の土地売却の税金が見えてきます。

土地の売却で税金がかかるのは「売却益(譲渡所得)」が出たときだけ

土地売却の税金は、売却額の全体ではなく、そこから費用などを引いて残った利益(譲渡所得)にだけかかります。

土地を売って受け取る金額が、そのまま課税されるわけではありません。売却額から取得費と譲渡費用を引いた利益(譲渡所得)が出て、はじめて所得税と住民税の対象になります。

一方、印紙税や登録免許税、解体費などは利益の有無に関わらず生じる費用です。これらは利益にかかる税金とは別に支払うものなので、まずは譲渡所得そのものに注目します。

土地の税額を左右する3つの分かれ目|取得費・使える特例・更地化

土地売却の税額は、取得費・使える特例・更地化という3つの分かれ目でほぼ決まります。

土地の税金は計算式こそ単純ですが、式に入れる数字と差し引ける項目しだいで結果は大きく変わります。特に税額を分けるのが、次の3点です。

分かれ目税額への効き方
取得費不明だと売却額の5%扱いとなり、税額が膨らむ
使える特例マイホーム特例が原則使えず、頼れる特例が限られる
更地化解体か古家付きかで、費用の扱いと空き家特例が変わる

この3点はいずれも、土地ならではの事情から生まれます。建物がないため減価償却を考えずに済む反面、取得費が税額にそのまま響きます。さらに住んでいない土地はマイホーム特例から外れやすく、使える特例が限られます。

税額の出し方と、このモデルケースで試算する前提(相続した更地・取得費不明)

土地売却の税額は、「譲渡価額−取得費−譲渡費用」で利益を出し、特例を引いた残りに税率を掛けて求めます。

計算の流れ自体は複雑ではありません。売却額から取得費と譲渡費用を引いて利益を出し、使える特例(特別控除)があればそこから差し引きます。残った金額が課税の対象となり、これに税率を掛けたものが納める税額です。

譲渡価額 − 取得費 − 譲渡費用 − 特別控除 = 課税譲渡所得 課税譲渡所得 × 税率 = 税額

税率は、土地の所有期間によって2段階に分かれます。5年を超える長期なら20.315%、5年以下の短期なら39.63%です。相続した土地は親が持っていた期間を引き継ぐため、原則として長期にあたります。

所有期間区分税率
5年超長期20.315%
5年以下短期39.63%

出典:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)(国税庁)

以降は、次のモデルケースに自分の数字を当てはめながら税額を積み上げます。先祖から相続した土地を解体し、更地で売る想定です。

項目前提
売却見込み額2,000万円
取得費不明(相続した土地で記録が残っていない)
譲渡費用約170万円(解体費・仲介手数料・測量費)
所有期間親からの引き継ぎで長期

この前提に取得費を当てはめるところから、試算が始まります。

土地売却の税金は取得費で決まる|不明だと税額が大きく膨らむ

土地売却の税額は取得費で大きく変わり、取得費が分からないと利益がふくらんで税金も重くなります。

土地は建物のような減価償却がなく、買ったときの金額がそのまま税額に響きます。相続した土地は取得費の記録が残っていないことも多く、ここが税額の最大の分かれ目です。

あなたの土地の取得費を確かめる|相続なら親の購入額・購入時期を引き継ぐ

取得費とは土地を手に入れたときの購入代金などで、相続した土地は親(被相続人)が買った金額と時期をそのまま引き継ぎます。

取得費は、購入代金に購入時の仲介手数料や登記費用などを加えた金額です。土地は建物と違って減価償却で目減りしないため、買ったときの金額がそのまま残ります。

相続した土地は、自分が相続したときの価格ではなく、親が買ったときの金額が取得費になります。買った時期も引き継ぐので、所有期間は親が取得した日から数えます。

出典:No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期(国税庁)

先祖代々の土地では、その購入額や時期の記録が残っていないことも珍しくありません。記録があるかどうかで税額が大きく動くため、まずは手元の資料を確かめることが出発点になります。

取得費が分からないと売却額の5%扱いになる|土地で打撃が大きい理由

取得費が分からない土地は、売却額の5%だけを取得費とみなして計算するため、利益がふくらみ税額も重くなります。

取得費が不明なときは、売却額の5%を取得費とする「概算取得費」が使えます。2,000万円で売る今回のモデルケースなら、取得費は100万円にとどまります。

この5%という水準は、土地にとって特に打撃が大きくなります。建物は減価償却で取得費が減るのに対し、土地は本来そうした目減りがなく、実際の購入額が5%を大きく上回るのが普通だからです。

出典:No.3258 取得費が分からないとき(国税庁)

概算取得費を使うと、売却額のおよそ9割が課税対象になります。モデルケースで仮置きすると、譲渡所得は次のとおりです。

2,000万円 −(取得費100万円 + 譲渡費用170万円)= 譲渡所得 1,730万円

取得費の手がかりが見つかれば、この100万円が増え、利益はそのぶん小さくなります。

概算5%を避けるために取得費の手がかりを探す(売買契約書・通帳・登記)

概算5%を避けるには、当時の購入額を示す資料を探し、実際の取得費で計算できないかを確かめます。

実際の取得費を証明できれば、概算の100万円より大きな金額を差し引けて利益が減ります。1,730万円の利益に20.315%がかかる今回のモデルでは、取得費が増えるほど税額は軽くなります。

探したいのは、当時の金額が分かる次のような資料です。

  • 土地の売買契約書、分譲時のパンフレット
  • 住宅ローンの金銭消費貸借契約書
  • 購入代金を振り込んだ通帳の記録
  • 登記簿や登記済証(権利証)

資料が見つからない場合も、別の方法で取得費を推計できることがあります。

土地売却で使える税金の特例は限られる|マイホーム特例は原則対象外

土地だけの売却では、住んでいた家に使えるマイホームの3,000万円控除が原則使えず、頼れる特例は限られます。

更地や住んでいない土地は居住用財産にあたらないため、マイホーム特例の対象から外れます。相続した土地で現実的に使えるのは、相続税を納めた人向けの取得費加算です。

なぜ土地だけの売却ではマイホームの3000万円控除が使えないのか

マイホームの3,000万円控除は「住んでいた家屋」を売ることが前提のため、更地や非居住の土地だけの売却では原則使えません。

この控除は、自分が住んでいた家とその敷地を売ったときに、利益から最大3,000万円を差し引ける制度です。家屋を取り壊した更地や、もともと住んでいない土地だけの売却は、この「居住用財産」にあたりません。

自分が住んでいた家を取り壊した跡地なら、一定の条件下で例外的に対象となる場合もあります。ただし相続した土地のように自分が住んでいなければ、そもそも対象外です。

相続した土地で使える特例「取得費加算」|相続税を納め3年10カ月以内に売れるか

相続税を納めた人が相続開始の翌日から3年10か月以内に土地を売れば、納めた相続税の一部を取得費に加算でき、税額を抑えられます。

取得費加算は、相続した財産を一定期間内に売ったとき、その人が納めた相続税のうち売却分に対応する額を取得費に上乗せできる特例です。取得費が増えるぶん利益が小さくなり、所得税と住民税が軽くなります。

出典:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(国税庁)

使えるかどうかの判定は2点です。相続税を実際に納めていること、そして相続開始日の翌日から3年10か月以内に売ることを満たすかを確認します。

取得費が不明で概算5%を使う場合でも、この加算は上乗せできます。一方で、相続税を納めていない人や期限を過ぎた売却では使えないため、自分が当てはまるかを早めに確かめておくと安心です。今回のモデルケースでも、相続税を納めていれば1,730万円の利益をさらに圧縮できます。

更地にして売る土地の税金|解体費の扱いと空き家特例の条件

相続した実家を更地にして売るか古家付きで売るかで、解体費の扱いと空き家特例が使えるかが変わります。

更地化は土地売却ならではの分かれ道です。売るために取り壊した解体費は譲渡費用にでき、要件を満たせば空き家の3,000万円控除で税額が大きく下がります。

更地で売るか古家付きで売るか|税金で変わるポイント

税金の面では、解体費を差し引けるかと、空き家特例をどう受けるかが、更地と古家付きで分かれます。

相続した実家は、取り壊して更地で売る方法と、建物を残したまま売る方法があります。どちらを選ぶかで、差し引ける費用と使える特例が変わります。

比較点更地で売る古家付きで売る
解体費売却のための費用として差し引けるかからない(値引きの要因になりやすい)
空き家特例取壊し後の土地として適用できる耐震基準を満たせば家屋付きでも適用できる

どちらが有利かは、解体費の負担と売れやすさ、空き家特例の要件を満たせるかで決まります。今回のモデルケースは更地での売却を前提に、以降の税額を見ていきます。

解体費は土地売却の税金計算で差し引けるのか(譲渡費用としての扱い)

土地を売るために建物を取り壊した解体費は、譲渡費用として売却益から差し引けます。

譲渡費用は、土地を売るために直接かかった費用を指し、仲介手数料や測量費に加えて取壊し費用も含まれます。今回のモデルケースの譲渡費用170万円にも、この解体費が含まれています。

出典:No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)(国税庁)

ただし差し引けるのは、あくまで売却を目的とした取り壊しに限られます。取り壊したあとに土地を長く寝かせたり別の用途に使ったりすると、譲渡費用として認められないことがあります。

空き家の3000万円控除は更地化の順番と期限が鍵|翌年2月15日までの解体

空き家の3,000万円控除は、相続した実家の利益から3,000万円を差し引ける制度で、解体の順番と複数の期限を満たすことが条件です。

対象になるのは、亡くなった親が一人で住んでいた昭和56年5月31日以前の建物とその敷地です。更地で受けるには、次の順番と期限を満たす必要があります。

  • 取り壊してから売る(売却後なら翌年2月15日までに解体)
  • 相続開始から3年目の年末までに売る
  • 制度の適用期限である2027年12月31日までに売る
  • 市区町村で「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受ける

ここで見落とせないのが、取得費加算との関係です。同じ不動産には空き家特例と取得費加算のどちらか一方しか使えないため、控除額の大きい方を選びます。今回のように利益が3,000万円以下なら、空き家特例で利益を消せる可能性が高くなります。

出典:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)

モデルケースで空き家特例が使えると、利益1,730万円から3,000万円を差し引けるため、課税される利益は残りません。要件を満たせなければ、この1,730万円に税率がかかります。

土地売却の税金を試算して手取りを出す|確定申告と次の一歩

ここまで積み上げた利益に税率を掛ければ、自分の土地売却の概算税額と手取りが出ます。

相続した土地は原則20.315%の長期税率です。モデルケースの税額と手取りを確定し、確定申告の要否と次の一歩まで整理します。

控除後の課税対象に税率を掛けて税額を出す|相続した土地は原則「長期」

特例を引いたあとの課税対象に税率を掛けると税額が出て、相続した土地は原則20.315%の長期税率です。

相続した土地は、親が買った日を引き継いで所有期間を数えます。親の代から長く持っていた土地なら5年超の長期にあたり、税率は20.315%です。

仮に取得から5年以内の短期だと、税率は39.63%とほぼ2倍に上がります。所得税・復興特別所得税・住民税という内訳の詳しい配分は、譲渡所得税の計算で確かめられます。

モデルケースの税額と手取り(売却額−税金−費用)を確定する

モデルケースの税額と手取りは、空き家特例を使えるかどうかで大きく変わります。

まず特例を使わない場合です。利益1,730万円に長期20.315%を掛けると、税額は約351万円になります。

1,730万円 × 20.315% = 約351万円(特例なし) 手取り:2,000万円 − 税金351万円 − 費用170万円 = 約1,479万円

一方、空き家特例が使えると課税対象が残らず、税額は0円です。

税額 0円 → 手取り:2,000万円 − 費用170万円 = 約1,830万円

同じ土地でも、特例が使えるかどうかで手取りは約350万円変わります。要件を満たせそうなら、確認書の取得と解体の順番を早めに段取りしておく価値があります。

利益が出ない・取得費が判明したときは税金がかからないことも

売却益が出ない場合や、取得費が概算5%より大きいと分かった場合は、税金がかからない、または軽くなることがあります。

売却額より取得費と譲渡費用の合計が大きければ、利益が出ず譲渡所得税はかかりません。値下がりした土地や、譲渡費用がかさんだケースで起こり得ます。

また当時の購入額が分かり、それが概算5%を上回れば、その実額で計算して利益を小さくできます。自分のケースがどれに当てはまるかで、納める税金は変わります。

確定申告の要否と、正確な税額を出すために今できること

特例を使うなら税額が0円でも確定申告が必要で、正確な税額は売却額しだいのため、まず土地の価値を把握することが次の一歩です。

利益が出て税金がかかる場合はもちろん、空き家特例や取得費加算で税額が0円になる場合も確定申告は欠かせません。申告は売却した翌年の2月16日から3月15日に行います。

税率や特例の要件は改正されることがあり、適用の可否は個別の事情で変わります。確定的な判断は、最新情報を国税庁で確かめたうえで税理士に相談すると確実です。

ここまでの試算は、すべて売却額が起点になっています。正確な税額に近づける第一歩として、まずは複数社の査定で土地の価値を把握しておくとよいでしょう。

まとめ:土地売却の税金は「取得費・特例・更地化」で試算する

土地売却の税金は、売却額そのものではなく利益にかかります。利益は取得費と譲渡費用で決まり、使える特例しだいで最終的な税額は大きく変わります。

相続した土地は取得費が分からないことが多く、概算5%だと利益がふくらみます。一方で要件を満たせば特例で税額を抑えられ、手取りは大きく変わります。

正確な税額は、売却額が決まってはじめて見えてきます。まずは複数社の査定で土地の価値を把握し、必要に応じて税理士に相談しながら、自分に合う進め方を見つけてください。