離婚の住み替えで家はどうする?3つの選択肢と選び方を整理

離婚を考えるとき、いま住んでいる家をどうするかは、大きな悩みのひとつではないでしょうか。

家の価値やローン残債、名義が絡み合い、何から考えればいいのか迷ってしまう方も少なくありません。

この記事では、自分のケースで取り得る道を整理し、落ち着いて次の一歩を選べるよう道筋を示します。

離婚の住み替えで家はどうなる?2つの分かれ道と整理の出発点

離婚にともなう住み替えで家をどうするかは、家の価値・ローン残債・名義の状況によって進む道が決まってきます。

この記事は、自分がどの道に進めるのかを順に整理するための地図です。まず家がたどる2つの道を押さえ、判断を分ける残債と名義の関係を確かめ、最後に自分の現在地を書き出せるところまで進みます。離婚そのものは特別なことではなく、2024年の離婚件数は18万組を超えています。家のことも、論点を一つずつ分ければ落ち着いて向き合えます。

出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」

離婚の住み替えで家がたどる道は大きく2つ

離婚にともなう住み替えで家がたどる道は、売却して清算するか、どちらかが住み続けるかの大きく2つに分かれます。

売却して清算する道は、家を手放して残った財産や負債を分け、互いに区切りをつける進み方です。どちらかが住み続ける道は、生活の場をできるだけ変えずに、一方がその家で暮らしを続ける進み方です。

売却の道は、家の価値で残債を返せるかどうかでさらに枝分かれします。残債を完済できる場合は通常の売却で清算でき、売っても残債が残る場合は任意売却という別のルートになります。

住み続ける道は、夫婦のどちらかがそのまま暮らし続ける形が基本です。住みながら資金を確保するリースバックという枝もあり、どちらの道が現実的かは、次に見る残債と名義の状況で決まってきます。

2つの道主な枝
売却して清算する通常の売却(残債を完済できる)/任意売却(残債が残る)
どちらかが住み続ける一方がそのまま住む/リースバックで住み続ける

道を分ける出発点は「家の価値とローン残債」

どちらの道に進めるかは、いまの家の価値とローン残債のどちらが上回っているかで最初に決まります。

この価値と残債の関係は、後で選択肢を比べるときの共通の物差しになります。まずは自分の家がどちらの状態に近いかを、大づかみに捉えておくことが先決です。

家の価値がローン残債を上回る状態を、アンダーローンと呼びます。この場合は売却代金で残債を完済しやすく、清算して住み替える道に進みやすくなります。

反対に、売ってもローン残債が残る状態がオーバーローンです。通常の売却では完済できないため、任意売却や、そのまま住み続ける道を含めて検討することになります。

区分価値と残債の関係進みやすい方向
アンダーローン価値 ≧ 残債売却して清算
オーバーローン価値 < 残債任意売却・住み続ける

トラブルの根は「居住者・登記名義・ローン名義」の3つのズレ

離婚の住み替えで揉めやすいのは、住む人・登記の名義・ローンの名義という3つがずれているときです。

たとえば一方が家に住み続けるのに、登記の名義はもう一方のまま、という状態はよくあります。登記名義は法律上の所有者を示すもので、名義人の同意がなければ売却も名義の書き換えも進められません。住む人と所有者が分かれたままだと、いざ手放したいときに話がまとまらない原因になります。

ローンの名義と連帯保証も見落とせない論点です。家を出ていく側が名義人や連帯保証人のまま残ると、住んでいないのに返済の義務だけが続きます。返済が滞れば出ていった側に請求が及ぶ可能性もあり、注意が必要です。

この3つは、それぞれ別の人に分かれていることが少なくありません。だからこそ、誰が住み・誰の名義で・誰がローンを負うのかを最初に把握することが、整理の出発点になります。

3つの名義確認することずれると
居住者誰が住み続けるか住む人と所有者が別になる
登記名義登記上の所有者は誰か同意なしに売却・変更できない
ローン名義名義人・連帯保証人は誰か住まない側に返済義務が残る

あなたのケースを整理するチェックリスト

まずは残債・名義・希望を書き出すと、自分がどの道に近いのかが見えてきます。

下のチェックリストは、現在地を確かめるための簡単な手がかりです。すべてを完璧に埋める必要はなく、わかる範囲で書き出すだけでも整理が進みます。

書き出してみると、自分のケースが売却・任意売却・住み続けるのどれに近いかが見えてきます。空欄が残った項目は、これから調べたり相談したりするポイントになります。

  • [ ] ローン残債はいくら残っているか
  • [ ] いまの家はおよそいくらで売れそうか
  • [ ] アンダーローンか、オーバーローンか
  • [ ] 登記の名義は誰になっているか
  • [ ] ローンの名義人・連帯保証人は誰か
  • [ ] 自分は住み続けたいか、出ていきたいか
  • [ ] 子どもの生活環境を変えたくない事情があるか

離婚の住み替えで損しないための財産分与と名義の整理

選択肢を選ぶ前に、お金と名義がどう整理されるかという軸を押さえておくと、後で揉めたり損をしたりするのを防げます。

この章では、分与の扱いがアンダーローンとオーバーローンでどう変わるかを確かめます。あわせて、3つの名義をそろえる理由と、2026年に変わった制度も押さえます。ここで押さえた軸が、次の選択肢を比べるときの物差しになります。

アンダーローンなら「時価−残債」のプラスが分与対象

アンダーローンの家は、時価から残債を引いて残るプラスの部分が、財産分与で分け合う対象になります。

売却すればローンを完済でき、手元に残った金額を夫婦で分けるのが基本の考え方です。たとえば時価3000万円・残債2000万円なら、差額の1000万円が分与の対象になります。

実際にどのくらいの割合で分けるかは、財産を築いた貢献度などを踏まえて話し合いで決めます。金額の線引きで迷う場合は、早めに専門家へ相談すると安心です。

オーバーローンなら家は分与対象外、残債は名義人が負担する

オーバーローンの家は、売っても残債が残るため財産分与の対象にはならず、残った借入はローン名義人が負い続けます。

分け合えるプラスの財産がないため、家そのものは分与の話から外れます。一方で残債は消えるわけではなく、ローン名義人の返済義務として残ります。

注意したいのは、名義人ではない側が連帯保証人になっている場合です。離婚しても保証は自動では外れないため、残債の扱いは名義の整理とあわせて考える必要があります。

残債をどう返していくかは、借換えや売却を含めて複数の道を比べることになります。金融機関の確認が欠かせないため、自己判断で抱え込まないことが大切です。

居住者・登記名義・ローン名義の3つをそろえる重要性

トラブルを避ける核は、住む人・登記の名義・ローンの名義の3つを、できるだけ一人にそろえることです。

家に住み続ける人が登記の所有者であり、ローンの返済者でもある状態が、もっともシンプルで揉めにくい形です。3つが一致していれば、相手の同意や保証の問題に後から悩まされずに済みます。

反対に名義がそろわないままだと、住んでいない側にローンや保証が残り、関係を清算しきれません。相手名義の家に住み続ける形も、将来その家を勝手に売られる不安がつきまといます。

そろえる手段には、ローンの借換えや名義変更があります。いずれも金融機関の審査が前提となるため、実現できるかどうかは収入や残債しだいで変わります。早い段階で見通しを確認しておくと安心です。

2026年改正民法で変わった点

2026年4月の民法改正で、財産分与を請求できる期間が2年から5年に延び、離婚後の親権も父母双方で持てるようになりました。

この改正は、2026年4月1日に施行された「民法等の一部を改正する法律」によるものです。請求期限の延長は2026年4月1日以降に成立した離婚に適用され、それより前に成立した離婚は従来どおり2年のままです。

出典:法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」

親権については、これまでの単独親権に加えて、父母双方を親権者とする共同親権を選べるようになりました。どちらを選ぶかや具体的な取り決めは個別性が高いため、弁護士など専門家への相談が前提になります。

あわせて知っておきたいのが、財産分与で受け取った財産には原則として贈与税がかからない点です。ただし年金分割は財産分与とは別の手続きで、請求期限は離婚した日の翌日から2年のまま変わりません。

出典:国税庁「No.4414 離婚して財産をもらったとき」

【選択肢1】売却して住み替える(清算してそれぞれの新生活へ)

売却して住み替える道は、アンダーローンで、共有名義や連帯保証をきれいに断ち切って区切りをつけたい人に向いています。

最もシンプルで将来のリスクが少ない進み方ですが、売却に数か月かかることや、子どもの生活環境への配慮は欠かせません。ここでは向いている状況、お金と名義の整理、進めるときの注意点を順に見ていきます。

売却して住み替えが向いているケース

売却が向いているのは、売却代金で残債を完済でき、家を手放して新生活に切り替えたい場合です。

共有名義や連帯保証を解消して、相手との金銭的なつながりを残したくない人にも合います。家という共有財産を現金に換えれば、分け方もはっきりして合意に至りやすくなります。

子どもがすでに独立している場合や、双方が新しい住まいへ移ることに納得している場合も進めやすい状況です。気持ちの整理と生活の立て直しを、同時に進めたいときの選択肢になります。

売却した場合のお金と名義の整理

売却では、代金でローンを完済して残りを分け、抵当権と3つの名義をまとめて解消できます。

売却代金でまず残債を返し、手元に残った金額を財産分与として分け合うのが基本の流れです。ローンを完済すると、金融機関が家に設定していた抵当権も外せます。

家を手放すことで、居住者・登記名義・ローン名義の3つは買主へ移り、夫婦間のズレも解消されます。連帯保証も完済とともに役目を終えるため、離婚後に保証だけが残る心配もなくなります。

売却額の見当をつけておくと、残債を返して手元にいくら残るかが具体的に見え、分与の話し合いも進めやすくなります。

売却して住み替える時の注意点

売却を進めるうえでは、時間がかかること、子どもへの配慮、売るタイミングの3点に注意します。

家が売れて引き渡しが終わるまでには、数か月かかるのが一般的です。新居の確保や引っ越しの段取りも重なるため、余裕をもったスケジュールを組んでおくと安心です。

子どもがいる場合は、学校や友人関係など生活環境の変化にも目を向けたいところです。転校の時期や心理的な負担をやわらげる工夫を、早めに話し合っておくとよいでしょう。

売却のタイミングにも注意が必要です。離婚が成立する前に家や名義を相手へ移すと、夫婦間の贈与とみなされて贈与税の対象になりやすくなります。居住用の3000万円特別控除も離婚後でないと使えないため、原則は離婚成立後に進めるほうが税制上は有利です。

出典:国税庁「No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき」

【選択肢2】オーバーローンでも住み替えたい場合(任意売却という選択肢)

オーバーローンでも住み替えたい場合は、金融機関の同意を得て売る任意売却が選択肢になります。

売っても残債が残る家は通常の売却では手放しにくく、別のルートを通ることになります。感情的に追い込まず、向いている状況・お金と名義の整理・注意点を順に整理すれば、進める道は見えてきます。

任意売却が向いているケース

任意売却を考えるのは、残債が家の価値を上回り、自己資金で差額を埋めるのも難しい場合です。

通常の売却では、売却代金で残債を完済できないと金融機関が抵当権を外さず、引き渡しができません。任意売却は、その残債が残る状態でも金融機関の合意を得て売る方法です。

住宅ローンの返済がすでに苦しい場合や、競売を避けて少しでも条件よく手放したい場合に検討されます。離婚を機に家計を二つに分けると返済が回らなくなるケースでも、候補にあがります。

オーバーローン時のお金と名義の整理

任意売却では、売却後に残る残債の返し方と、金融機関との調整が整理の中心になります。

売却代金を残債に充てても返しきれない分は、原則として借入として残り、分割返済などで返していきます。返済の負担をだれがどう負うかは、財産分与とあわせて取り決めることになります。

任意売却には、ローンを貸している金融機関の合意が欠かせません。売却価格や残債の返済計画について、金融機関と事前に調整したうえで進めます。

共有名義や連帯保証がある場合は、関係する全員の合意も必要になります。だれの名義で、だれが保証に入っているかを先に確認しておくと、手続きがスムーズです。

任意売却を選ぶ時の注意点

任意売却は、信用情報への影響と専門家の関与を前提に、慎重に進める選択肢です。

任意売却は返済が滞る状況で行われることが多く、その場合は信用情報に記録が残ります。一定期間は新たな借り入れやクレジットの利用が難しくなる点は、知っておく必要があります。

金融機関との交渉や手続きは複雑で、個人だけで進めるのは現実的ではありません。任意売却に詳しい専門家や、こうした取引に対応する不動産会社の関与が前提になります。

残債が残るという事実に動揺しやすい場面ですが、焦って決める必要はありません。状況を一つずつ整理すれば取り得る道はあるため、まずは正確な残債と価値を把握することから始めます。

【選択肢3】住み替えずにどちらかが住み続ける

住み替えずにどちらかが住み続ける道は、子どもの生活環境を変えたくないなど、家を残したい人に向いています。

感情的には選びたくなる道ですが、名義とローンの整理がもっとも難しいのも事実です。住み続ける側にも、家を出てローン名義が残る側にも、見落とせない注意点があります。

住み続ける道が向いているケース

住み続ける道が向いているのは、子どもの学校や生活環境をできるだけ変えたくない場合です。

転校による子どもの負担を避けたい、当面は生活を大きく動かしたくない、という事情があるときに選ばれます。住み慣れた家を残すことで、離婚後の生活の変化をやわらげられます。

ただし、この道を選べるかは感情だけでは決まりません。次に見るローンと名義の整理が現実的に進められるかが、実際の分かれ目になります。

住み続ける場合のお金と名義の整理

住み続けるには、住む人にローンと登記の名義をそろえる借換えが理想で、難しい場合はリースバックという枝もあります。

相手名義のローンが残ったままだと、返済や売却をめぐって後々もめやすくなります。住み続ける側が自分名義でローンを借り換え、登記もそろえれば、関係をすっきり清算できます。

借換えが収入面で難しい場合は、家をいったん売って買主に貸してもらい、住み続けるリースバックも選べます。住まいを変えずに資金を確保できる一方、家賃の負担や買い戻しの条件は事前の確認が欠かせません。

借換えで名義をそろえられれば、住む人・所有者・返済者が一致し、3つのズレが解消されます。

住み続ける時の注意点

住み続ける道では、連帯保証から抜けにくい点や相手名義のまま住むリスクなど、注意したい点がいくつかあります。

連帯保証人や連帯債務者は、離婚しても自動では外れません。家を出ていく側がこの立場のまま残ると、住んでいない家のローンに責任を負い続けることになります。

相手名義の家に住み続ける側にも、不安は残ります。名義人が無断で売却したり、返済を滞らせたりすると、住まいを失うおそれがあるためです。

名義をそろえる借換えにも、ハードルがあります。単独の収入でローン審査を通す必要があり、収入や勤続年数によっては希望どおりに借り換えられないこともあります。

もう一つ見落としがちなのが、ローン名義人が家を出ていく側になるケースです。住宅ローンは名義人本人が住むことを条件とする商品が多く、名義人が住まなくなると規約違反となる場合があります。

結局どうする?離婚の住み替えのケース別の選び方

自分のケースがどの選択肢に近いかは、アンダーかオーバーか、そして家を残したいかという2つの軸で振り分けられます。

3つの選択肢を、向いているケース・お金・名義・注意点で並べて見比べます。表で全体をつかんだうえで、自分の状況がどこに当てはまるかを軸ごとに確かめていきます。

選択肢向いているケースお金と残債名義の整理主な注意点
売却して住み替えアンダー/清算したい完済して差額を分与売却で一括解消売却に数か月・子の環境
任意売却オーバー/差額を出せない残債が残り分割返済金融機関の合意が要る信用情報・専門家が前提
住み続ける環境を変えたくない借換えで一本化そろえるのが難しい保証が残る・審査の壁

アンダーローンで早く清算したいなら、売却して住み替え

アンダーローンで、離婚を機にきれいに清算して前に進みたいなら、売却して住み替える道が中心になります。

売却代金で残債を返せるため、名義や保証のつながりも一度に断ち切れます。気持ちの上でも区切りをつけやすく、新生活への切り替えがスムーズです。

オーバーローンで残債が残るなら、任意売却を軸に検討

売っても残債が残るオーバーローンなら、任意売却を軸に、住み続ける道とも比べながら検討します。

自己資金で差額を埋められないか、金融機関と調整して任意売却に進めるかを順に確かめます。判断には専門家の関与が前提になるため、早めに相談先を見つけておくと安心です。

子の環境を守って住み続けたいなら、名義をそろえられるかが分岐

子どもの環境を守って住み続けたいなら、住む人に名義をそろえられるかどうかが現実的な分かれ目です。

単独でローンを借り換えられれば、住み慣れた家を残しながら関係を清算できます。借換えが難しい場合は、リースバックや、いったん売却して住み替える道も視野に入ります。

迷ったら、まず家の価値を知ることが話し合いの出発点

どの道に進むか迷うときは、まず家がいまいくらで売れそうかを知ることが、話し合いの出発点になります。

アンダーローンかオーバーローンかは、家の価値とローン残債を比べて初めてわかります。残債は通帳や返済予定表で確認でき、家の価値は不動産会社の査定でおおよそつかめます。

価値の見当がつくと、3つの選択肢のうち現実的なものが2つほどに絞られ、相手との話し合いも具体的に進められます。複数の会社にまとめて査定を依頼できる一括査定なら、相場感を効率よくつかめます。

数字を知ることは、相手を急かすためではなく、自分が落ち着いて判断するための材料です。財産分与や親権など法律にかかわる判断は、弁護士など専門家の力も借りながら進めていきましょう。

まとめ:自分の状況を整理すれば、進む道は見えてくる

離婚にともなう住み替えで家がたどる道は、家の価値・ローン残債・名義の状況によって決まってきます。まずは自分がどの状態にあるかを整理することが、納得できる選択への近道です。

売却・任意売却・住み続けるのどれが合うかは、どれが優れているかではなく、自分の状況しだいで変わります。論点を一つずつ分けて確かめれば、焦らずに見極められます。

その出発点になるのが、いまの家がいくらで売れそうかを知ることです。複数の会社へまとめて依頼できる一括査定で相場感をつかみ、法律にかかわる判断は専門家にも相談しながら進めましょう。