不動産を売却したあと、確定申告が必要なのかどうか分からず不安を感じていませんか。
年末調整しか経験のない会社員にとって、申告の要否や期限、届け出の段取りはなじみがなく戸惑うものです。
この記事を読むと、必要・不要の判定から期限・手順・自力か税理士かの判断まで、確定申告の全体像を一本の流れで把握できます。
不動産売却で確定申告は必要?まずは必要・不要を判定する
売却益が出ていれば原則必要、出ていなくても特例を使うなら申告が必要です。
利益の有無と特例の利用予定、この2つを軸に自分が確定申告すべきかどうかを判定できます。以下の3パターンに分けて整理するので、自分に近いものから読み進めてください。
| あなたの状況 | 確定申告 | 理由 |
|---|---|---|
| 売却益(譲渡所得)が出た | 必要 | 所得税・住民税の課税対象 |
| 利益なし or 赤字だが、特例を使いたい | 必要 | 特例の適用には申告が条件 |
| 利益なし or 赤字で、特例も使わない | 不要 | 課税される所得がない |
| 会社員で譲渡所得が20万円以下 | 所得税は不要/住民税は要注意 | 後述 |
売却益(譲渡所得)が出た人は確定申告が必要
譲渡所得がプラスなら、金額の大小にかかわらず確定申告が必要です。
譲渡所得は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算します。取得費は購入代金や購入時の仲介手数料など、譲渡費用は売却時の仲介手数料や印紙代などが該当します。この計算結果が1円でもプラスになれば、所得税と住民税の課税対象です。
まずは売却価格と購入価格をざっくり当てはめてみてください。譲渡費用を差し引く前の段階で購入価格を上回っていれば、ほぼ確実に申告対象と考えてよいでしょう。
出典: 国税庁|No.3202 譲渡所得の計算のしかた(土地や建物を譲渡したとき)
利益が出ていなくても申告したほうがよい人(特例・繰越控除)
売却で利益が出ていない場合でも、税制上の特例を使うなら確定申告が必須です。
代表的なのが「3,000万円特別控除」です。マイホームの売却では、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例があり、これを適用すると課税額がゼロになるケースも多くあります。ただし「控除を使った結果、税額がゼロになった」場合でも、特例の適用を受けるためには確定申告書の提出が条件です。申告しなければ控除自体が受けられず、本来不要だった税金を納めることになります。
もうひとつ押さえておきたいのが、売却で赤字(譲渡損失)が出た場合です。一定の要件を満たすマイホームの売却では、その損失を給与所得など他の所得から差し引く「損益通算」が認められています。さらに、1年で引ききれなかった損失は最長3年間繰り越せる「繰越控除」も利用できます。いずれも申告しなければ適用されないため、赤字だから何もしなくていいとは限りません。
以下に、利益がゼロまたは赤字でも申告すべき主な特例をまとめます。
| 特例の種類 | 対象 | 概要 |
|---|---|---|
| 3,000万円特別控除(No.3302) | 利益が出たマイホーム | 譲渡所得から最大3,000万円を控除 |
| 買換え等の譲渡損失の繰越控除(No.3370) | 買い換えで赤字が出た場合 | 損失を給与等と通算+最長3年繰越 |
| 特定の譲渡損失の繰越控除(No.3390) | ローン残債を下回る売却 | 同上(買い換えなしでも利用可) |
特例ごとに所有期間や居住期間などの要件が異なるため、自分が該当するかどうかは個別に確認が必要です。
出典: 国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例
出典: 国税庁|No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき
出典: 国税庁|No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき
会社員が申告不要になる条件と、見落としやすい住民税
年末調整済みの会社員でも、不動産の売却益がある場合は原則として確定申告が必要です。
所得税法上、給与を1か所から受けていて年末調整が済んでいる会社員は、給与所得・退職所得以外の所得が年間20万円以下であれば確定申告をしなくてよいとされています。不動産売却による譲渡所得がこの範囲に収まるケースは多くありませんが、たとえば購入価格と売却価格がほぼ同額で譲渡所得がごくわずかだった場合などは、この基準に該当する可能性があります。
ただし、この「20万円以下なら申告不要」というルールは所得税に限った話です。住民税にはこの免除規定がないため、譲渡所得が20万円以下であっても、お住まいの市区町村への住民税申告は別途必要になる場合があります。所得税の確定申告をすれば住民税の情報も自動で連携されますが、確定申告をしない場合は住民税だけが未申告のまま残るため注意してください。
出典: 国税庁|No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
不動産売却の確定申告はいつまで?期限と遅れた場合のリスク
申告・納税の期限は、売却した翌年の2月16日から3月15日(曜日により前後)です。
所得税と住民税では納付のタイミングが異なり、住民税は数か月遅れで届きます。期限を過ぎるとペナルティが課されるため、逆算して準備を進めることが大切です。
所得税の申告・納税は売却した翌年の2月16日から3月15日
所得税の確定申告期間は、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までです。
たとえば2025年中に売却した場合、申告期間は2026年2月16日(月)〜3月16日(月)です。3月15日が日曜にあたるため、翌営業日の16日が期限となります。申告書の提出と所得税の納付はどちらもこの期間内に済ませる必要があります。
出典: 国税庁|令和7年分 確定申告特集
住民税はいつ納める?所得税との時期のずれに注意
住民税は、所得税の確定申告をすれば自治体へ情報が連携されるため、別途の申告手続きは不要です。
ただし納付の時期が異なります。住民税の通知は売却した翌年の6月ごろに届き、そこから納付が始まります。普通徴収(自分で納付)の場合は6月・8月・10月・翌年1月の年4回に分けて納めるのが一般的で、一括納付も可能です。会社員で特別徴収(給与天引き)を選んだ場合は、6月から翌年5月まで毎月の給与から差し引かれます。
所得税は3月に納付が終わるのに対し、住民税の通知は6月以降です。売却から半年以上経ってから届くため、会社員の方は「忘れたころに届く」と感じることが少なくありません。あらかじめ納付分を手元に確保しておくと安心です。
期限に遅れる・申告しないと科される税金
期限を過ぎた申告や無申告には、本来の税額に上乗せされるペナルティがあります。
代表的なものが「無申告加算税」と「延滞税」の2つです。無申告加算税は、税務調査の前に自主的に期限後申告した場合は納税額の5%ですが、税務調査後に指摘を受けると15〜30%まで税率が上がります(2024年以降、納税額300万円超の部分は30%に引き上げ)。延滞税は納期限の翌日から日割りで加算され、最初の2か月は年2.4%程度、それ以降は年8.7%程度が目安です(税率は毎年見直されます)。
さらに、事実を隠したり仮装したりして申告しなかった場合は「重加算税」(40%)の対象になり得ます。こうしたペナルティは申告が遅れるほど膨らむ仕組みです。
特例を使って税額がゼロになるケースでも、申告そのものを怠ると特例が適用できなくなり、結果的に課税される可能性があります。「自分は税額ゼロだから大丈夫」と放置せず、期限から逆算して早めに着手することが欠かせません。
不動産売却の確定申告の流れを5ステップで把握する
全体の流れを先に押さえておくと、どこに時間がかかるかが見え、逆算で動けるようになります。
確定申告の完了までは「書類集め → 譲渡所得の計算 → 特例の確認 → 申告書の作成 → 提出・納税」の5ステップで進みます。各ステップの詳細は専門記事に譲り、ここでは段取りの全体像と、つまずきやすいポイントに絞って整理します。
全体像:書類集めから納税までの5ステップと着手の目安
5つのステップを時系列で並べると、以下のようになります。
| ステップ | やること | 着手の目安 |
|---|---|---|
| 1. 書類を集める | 売買契約書・登記事項証明書・領収書など | 売却完了後すぐ |
| 2. 譲渡所得を計算する | 売却価格−取得費−譲渡費用 | 書類が揃い次第 |
| 3. 使える特例を確認する | 3,000万円控除・軽減税率・繰越控除など | 計算と並行 |
| 4. 申告書を作成する | 確定申告書・譲渡所得の内訳書 | 翌年1月〜 |
| 5. 提出・納税する | e-Tax送信 or 税務署へ提出+納付 | 2月16日〜3月15日 |
ステップ1の書類集めには想定以上に日数がかかることがあり、年末年始を挟むと役所の発行も遅れがちです。翌年の申告期間に入ってから慌てないよう、売却が完了した時点で書類の収集を始めるのが理想です。
ステップ2〜3は並行して進められます。特例を使うかどうかで必要書類が追加されるため、どの特例が使えそうか早めに目星をつけておくと効率的です。
最初の山場は書類集めと取得費の確認
段取り上もっとも手間がかかるのが、ステップ1の書類準備と取得費の確認です。
譲渡所得の計算に必要な「取得費」は、購入時の売買契約書や領収書から算出します。ところが住み替えのペルソナである40〜50代の方は、購入から10年以上経っていて契約書が見つからないケースが珍しくありません。取得費を証明する書類がない場合、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使うことになりますが、これは税額が大きく膨らむ原因になります。
たとえば4,000万円で売却した場合、概算取得費は200万円です。仮に実際の購入価格が3,000万円だったとすると、本来の譲渡所得は1,000万円前後ですが、概算取得費だと3,800万円近くが課税対象になります。購入時の書類がないか、まずは手元や不動産会社への問い合わせで確認してみてください。
申告書の作成・提出は会社員ならe-Taxが最短
会社員が初めて確定申告をする場合、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」をスマホまたはパソコンで利用するのがもっとも手軽です。
マイナンバーカードとマイナポータル連携を使えば、画面の案内に沿って入力するだけで申告書が完成し、そのままe-Taxで送信できます。税務署へ出向く必要がなく、控えもデータで残るため管理しやすい方法です。
納税方法は振替納税(口座引落し)やクレジットカード、コンビニ納付など複数の選択肢があります。なお、所得税を納め終えても住民税の通知は6月以降に届くため、納付分の資金を手元に確保しておくことをお忘れなく。
出典: 国税庁|確定申告書等作成コーナー
不動産売却の確定申告は自分でできる?税理士に頼むべきか
単純なケースなら自力で十分対応できますが、特例が絡む場合や高額な譲渡益が出た場合は税理士への依頼が安心です。
会社員にとって「自力でやるか、プロに任せるか」は最初に迷うポイントです。以下では、判断の材料となるケース分け・費用感・迷ったときの考え方を整理します。
自分で申告できる人・税理士に頼んだほうがよい人
申告の複雑さはケースによって大きく異なります。まずは自分がどちらに近いかを確認してみてください。
自力で対応しやすいのは、売却した不動産が単独名義で購入時の契約書も手元にあり、使う特例が3,000万円控除のみ(または特例なし)というケースです。確定申告書等作成コーナーの案内に沿って入力すれば、計算ミスのリスクも低く抑えられます。
一方、複数の特例を組み合わせる場合や共有名義で持分ごとの計算が必要な場合、高額な譲渡益が出ている場合は要件の見落としが税額に大きく影響します。特例を使うつもりで申告したものの要件を満たしておらず、あとから修正申告を求められるといったリスクもあるため、税理士に依頼するほうが結果的にコストを抑えられることがあります。
| 判断の目安 | 自力で十分 | 税理士が安心 |
|---|---|---|
| 名義 | 単独名義 | 共有名義・相続後 |
| 使う特例 | なし or 3,000万円控除のみ | 買換え・併用・繰越控除 |
| 取得費 | 契約書あり | 不明・概算取得費 |
| 譲渡益の規模 | 小さい | 数百万円〜高額 |
税理士に依頼したときの費用相場と任せられる範囲
税理士に不動産売却の確定申告を依頼した場合の費用は、譲渡所得の金額や特例の有無に応じておおむね5万〜20万円が目安です。
公開情報をもとにした目安は以下のとおりです。
| 譲渡所得の金額 | 費用の目安 |
|---|---|
| 1,000万円未満 | 3万〜6万円 |
| 1,000万〜3,000万円 | 6万〜12万円 |
| 3,000万円以上 | 12万〜20万円以上 |
※特例の適用がある場合は加算されることがあります。
依頼できる範囲は事務所によりますが、書類の確認から譲渡所得の計算、申告書の作成・提出まで一括で任せられるのが一般的です。「丸投げ」でも対応してもらえるケースが多い一方、必要書類の収集だけは本人が行う必要がある点は覚えておいてください。
迷ったときの判断軸(特例の複雑さ・手間・ミスのリスク)
自力か税理士かで迷ったときは、次の3つの観点で考えると結論を出しやすくなります。
1つめは「特例の複雑さ」です。3,000万円控除のみであれば要件もシンプルですが、買換え特例や繰越控除を組み合わせる場合は要件が細かく、判断を誤ると控除自体を失う可能性があります。
2つめは「自分にかけられる時間」です。書類の準備から申告書の作成まで、初めての方は10時間以上かかることも珍しくありません。繁忙期と重なる場合は、時間を費用に換える選択も合理的です。
3つめは「申告ミスで控除を失うリスク」です。特例の適用要件を満たしていないまま申告すると、後日税務署から修正を求められ、追加の税負担が発生し得ます。控除額が大きいほど、ミスの損失額も大きくなる構造です。
この3点を天秤にかけて、少しでも不安を感じるなら税理士への相談を検討する価値があります。多くの税理士事務所は初回相談を無料で受けているため、見積もりだけでも取っておくと判断材料が増えます。
ケース別に見る不動産売却の確定申告の注意点
ここまでの内容は単独名義・同一年内の引き渡しを前提にしていますが、実際にはそれ以外の状況も少なくありません。
共有名義、年またぎの取引、相続や離婚による売却など、ケースが変わると確定申告で押さえるべきポイントも変わります。それぞれ「申告上ここだけは確認してほしい」という点に絞って整理します。
共有名義の不動産は持分ごとに各自が申告する
共有名義の不動産を売却した場合、代表者がまとめて申告することはできません。共有者がそれぞれ自分の持分に応じた譲渡所得を計算し、個別に確定申告を行います。
3,000万円特別控除も共有者ごとの判定です。たとえば夫婦で2分の1ずつ所有している場合、居住要件を満たしていれば夫・妻それぞれが最大3,000万円の控除を受けられます。つまり合計で最大6,000万円の控除が可能です。ただし、居住実態のない共有者は控除の対象外となるため、共有者全員が同じ条件で控除を受けられるとは限りません。
契約と引き渡しが年をまたぐときは申告する年を選べる
不動産の売買で「契約日」と「引渡日」が年をまたぐ場合、どちらの年で申告するかを選択できます。
所得税の原則は引渡日の属する年ですが、所得税基本通達36-12により、納税者の選択で契約の効力発生日(通常は契約締結日)の属する年に申告することも認められています。申告する年が変わると、その年の1月1日時点で判定される所有期間が変わり、税率(短期譲渡・長期譲渡)や使える特例にも影響します。
たとえば12月に契約し翌年1月に引き渡す場合、引渡日基準なら翌年の申告になりますが、契約日基準を選べば当年の申告にできます。どちらが有利かは所有期間や他の所得との兼ね合いで異なるため、年をまたぐ取引では事前に税額を試算しておくことをおすすめします。
出典: 国税庁|所得税基本通達36-12(譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期)
相続した家・離婚で売却した場合に確認すること
相続や離婚を経て不動産を売却するケースでは、通常の売却とは異なる点が複数あります。いずれも税額に大きく影響するため、該当する方は申告前に確認しておいてください。
相続した不動産を売却する場合、取得費と取得時期は被相続人(亡くなった方)から引き継ぎます。つまり、親が30年前に購入した家を相続して売却するなら、30年前の購入価格が取得費の基準になり、所有期間も30年超として長期譲渡所得の税率が適用されます。ただし、相続時の登記費用や相続税の一部を取得費に加算できる特例もあるため、通常の計算とは考慮すべき項目が異なります。
離婚に伴う財産分与で不動産を渡す側(分与する側)は、税務上「時価で譲渡した」とみなされ、譲渡所得が発生する可能性があります。受け取る側には原則として課税されませんが、その後に売却した場合は通常の譲渡所得税の対象です。財産分与の場面では「分与する側に課税される」という点が見落とされやすいため、特に注意が必要です。
いずれのケースも特有の要件や特例が複数あるため、迷ったら税理士に相談することをおすすめします。
出典: 国税庁|No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期
まとめ:段取りが描けたら、まずは売却額の把握から
不動産売却後の確定申告は、利益の有無と特例の利用予定で要否を判定し、期限から逆算して書類を準備するのが基本です。会社員でも売却益があれば申告義務があり、住民税の納付時期がずれる点にも注意してください。
シンプルなケースなら自力で完了できますが、複数の特例が絡む場合や取得費が不明な場合は税理士への相談が安心です。
税金の見通しを立てるには、まず自分の家がいくらで売れそうかを知ることが出発点になります。住み替えのトビラの一括査定で複数社の査定額を比較し、次のステップに進めてみてください。

