転勤で住宅ローン控除はどうなる?続く・止まる・再開をケース別に解説

転勤の辞令が出たとき、いま受けている住宅ローン控除がどうなるのか、不安に感じる方は少なくありません。

単身赴任か家族帯同か、戻るのか売るのかで、控除の扱いは大きく変わります。

この記事を読めば、自分の転勤ケースで控除が続くのか止まるのか、再開できるのかまで見分けられます。

転勤で住宅ローン控除はどうなる?ケース別の結論

住宅ローン控除は本人がその家に住んでいることが前提のため、転勤後に誰が住むかで、続く・止まる・再開する・終了するのいずれかに分かれます。

制度の細かな仕組みよりも先に、自分の転勤がどのケースに当てはまるかを知る方が近道です。下の早見表で、まず自分のケースの結論を確かめられます。

控除が続く・止まる・再開するの分かれ目は「誰が住むか」

控除が続くか止まるか再開できるかは、転勤の行き先ではなく、その家に誰が住むかで決まります。

住宅ローン控除は、その家を取得した本人が住んでいることを前提とした制度です。本人が転勤で離れても、家族が住み続けて将来の帰任が見込めるなら、住んでいるものとして扱われます。

反対に、家族も一緒に転居して誰も住まなくなると、この前提が崩れて控除は止まります。やがて戻れば残った期間ぶんを再開でき、売却して家を手放せばそこで終わります。

ケース別早見表:単身赴任・家族帯同・再入居・売却

自分の転勤がどのケースかは、次の早見表で結論まで一度に確認できます。

控除の扱いは、家を離れる本人に加え、残る家族や戻る予定によっても変わります。下の表で自分のケースの行を見れば、控除の扱い・再開の時期・必要な手続きをまとめて把握できます。

ケース控除の扱い再開のタイミング必要な手続き
単身赴任(家族が残る)続く原則不要
家族帯同(誰も住まない)止まる戻れば再開できる転居前に届出
再入居(戻る)再開空き家は戻った年/賃貸は翌年確定申告で再適用
売却終了なし

同じ転勤でも、家族が残るか貸すか、いつ戻るかで結論は違ってきます。当てはまる行を起点に読み進めれば、必要な条件と手続きを順に確かめられます。

出典: 国税庁 No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等

単身赴任で家族が残れば住宅ローン控除は続く

単身赴任で家族がその家に住み続けるなら、住宅ローン控除は止まらず、そのまま受け続けられます。

本人が離れても生計を一にする家族が住み続け、いずれ本人も戻ると認められれば、住んでいるものとして扱われます。続く条件と、つまずきやすい点を順に確かめます。

控除が続く理由と必要な条件

控除が続くのは、生計を一にする家族が住み続け、やがて本人も戻ると認められる場合です。

住宅ローン控除は、その家に本人が居住していることを条件とした制度です。単身赴任で本人が離れても、家族がそのまま暮らしていれば前提は保たれます。転勤を終えて本人も戻ると見込めるなら、住んでいるものとして扱われ控除は続きます。

鍵になるのは、家族が「生計を一にする」関係にあることです。離れて暮らしていても、仕送りで生活費を支えていれば生計を一にすると認められます。

一方で、住むのが内縁関係の相手だけだと、親族にあたらないため控除の対象から外れます。続ける条件は家族の居住が軸で、本人の不在そのものは問題になりません。

出典: 国税庁 No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等

住民票を移しても控除は止まらない

赴任先へ住民票を移しても、住宅ローン控除が止まることはありません。

控除の判定で見られるのは、住民票がどこにあるかではなく、その家に家族が住み続けているかどうかです。遠方への単身赴任で住民票を移しても、家族が暮らしていれば本人が住んでいる扱いは変わりません。

住民票を動かすと控除が切れると考え、移すのをためらう必要はありません。判定の軸はあくまで家族の居住にあります。

海外赴任は取得時期で扱いが変わる

国外への赴任は、家を取得した時期によって控除の扱いが分かれます。

2016年4月以降に取得した家なら、海外への単身赴任でも、生計を一にする家族が年末まで住み続けていれば控除を受けられます。一方で2016年3月以前に取得した家は、改正前の扱いとなり、海外単身赴任の間は控除を受けられません。

国内の単身赴任なら取得時期に関わらず控除は続くため、気をつけたいのは国外のケースに限られます。取得時期や所得の条件で判断が変わるので、自分のケースは税務署や税理士に確認すると安心です。

出典: 国税庁 No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等

家族帯同の転勤は住宅ローン控除が止まる

家族も一緒に転勤して誰も住まなくなると、住宅ローン控除はいったん止まります。

居住という前提が外れるため、家を空き家にしても賃貸に出しても控除は受けられません。ただし戻れば再開できる道は残り、止まる間に何を失うかをここで押さえます。

誰も住まないと控除が止まる理由(賃貸も対象外)

居住する人がいなくなると、控除の前提が外れて対象から外れます。

住宅ローン控除は、本人がその家に住んでいることを前提にした制度です。家族で帯同し誰も住まなくなると、この前提を満たせず控除は止まります。

留守の間に家を賃貸へ出しても、控除は戻りません。人が住んでいても、それは本人の自己居住ではないため、対象にならないからです。

止まっても控除期間は進む|延長されない落とし穴

控除が止まっている間も控除期間は進み、その分が後ろへ延ばされることはありません。

住宅ローン控除には、取得時期に応じた控除期間が定められています。2022年以降に取得した新築なら、入居から最長13年が枠です。

この期間は、住んでいるかどうかと関係なく暦の上で進みます。転勤で家を空けた年は控除を受けられず、その年数ぶんはそのまま枠から消えていきます。

仮に転勤で3年間家を空ければ、その3年ぶんの控除は受けられないまま過ぎていきます。空けた期間が後ろへ繰り延べられることはなく、戻れるのは残った期間だけです。

期間居住の状況控除
1〜3年目本人・家族が居住受けられる
4〜6年目家族帯同で空き家・賃貸止まる(枠は消費)
7〜13年目再入居残り7年分のみ再開

出典: 国税庁 No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等

失う控除額はいくら?モデルケースで確認

止まる年数ぶんで失う控除額は、年末のローン残高をもとにおおよその見当をつけられます。

控除額は、その年の年末ローン残高に0.7%を掛けた金額が目安です。残高が3,000万円なら、1年あたり約21万円が受けられない計算になります。

仮に家族帯同で3年間家を空ければ、単純計算で約60万円ぶんの控除を逃すことになります。残高は返済とともに減るため、実際にはこれより小さくなる場合が多い点に注意してください。

出典: 国土交通省 住宅ローン減税

転勤から戻れば住宅ローン控除は再開できる

転勤から戻り、控除期間が残っていれば、住宅ローン控除は再開できます。

残った年数ぶんを再び受けられますが、再開には手続きと期限の管理が欠かせません。転居前の届出を怠ると原則として再開できないため、流れを順に確かめます。

再開できるのは控除期間が残っている場合

再開できるのは、当初の控除期間が残っている場合に限られます。

再開で使えるのは、もともとの控除期間から経過年数を差し引いた残りの年数です。起点は取得時期に応じた期間で、新築なら最長13年、中古なら最長10年です。

たとえば13年の枠のうち、居住と留守で6年が過ぎていれば、戻った後に再開できるのは残りの7年ぶんです。経過した年数は戻りませんが、残っていれば最後まで受けられます。

反対に、留守の間に控除期間が満了していれば、戻っても再開する枠は残りません。まず自分の残存期間がどれだけあるかを、入居年から数えて確かめておくと判断しやすくなります。

再開はいつから?空き家と賃貸で1年違う

再開の時期は、家を空き家にしていたか賃貸に出していたかで1年ずれます。

空き家のまま戻ったときは、再び住み始めた年から控除が再開します。賃貸に出していたときは、その年は貸している状態だったとみなされ、再開は戻った翌年からになります。

この1年の差は、戻る時期と賃貸契約の終わり方しだいで生じます。再開を早めたいなら、賃貸を整理してから再入居する順番を意識すると無駄がありません。

再開に必須の手続き|転居前の届出を忘れない

再開には、転居する日までの届出と、再入居後の確定申告が欠かせません。

家を離れる前に、家屋の所在地を管轄する税務署へ「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を出します。これは将来戻ったときに再適用を受けるための予約のような手続きで、転居する日までに提出します。

戻って再び住み始めたら、その年分の確定申告で再適用を申請します。計算明細書や年末残高証明書を添えて、原則として翌年3月15日までに提出します。

タイミングすること
転居する日まで税務署へ不在の届出書を提出
再入居した年空き家は当年・賃貸は翌年から控除が再開
再開した年の翌年3月15日まで確定申告で再適用を申請

いちばんの落とし穴は、転居前の届出を忘れることです。届出がないと再開は原則認められず、やむを得ない事情があったと税務署長に認められた場合だけ、救済される余地が残ります。

救済は確実ではないため、引っ越しの準備に紛れて出し忘れないよう、転居前の手続きとして早めに済ませておくと安心です。

出典: 国税庁 A1-42 転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出手続国税庁 No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等

売却するなら住宅ローン控除は終了する

家を売って手放すと、住宅ローン控除はその時点で終了します。

売却した年は自己居住の前提が消え、控除を受けられないまま制度との関わりが終わります。控除を続けられるかに加えて、売る・貸す・残すを並べて考える必要があります。

売った年は控除を受けられない

売却した年は控除を受けられず、それ以降の控除もなくなります。

売却すると、その家に本人が住むという前提そのものが消えます。年末に自分の住まいでなくなっている以上、その年は控除の対象になりません。

一度手放せば、再開という考え方も当てはまりません。なお売却で利益が出た場合は、控除ではなく3,000万円特別控除など、譲渡益に関わる別の制度が検討の対象になります。

出典: 国税庁 No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等

控除より「売る・貸す・残す」で総合的に判断する

売るかどうかは、控除を続けられるかだけで決めず、暮らしと家計の全体で判断することが大切です。

控除を守ることばかりに気を取られると、かえって負担の大きい選択になりかねません。住宅ローンと赴任先の住居費が重なる二重負担や、戻れる見込みの薄さ、価格が下がる前に売る判断なども、同じ天秤に乗せて考えます。

売る・貸す・残すのどれが向いているかは、家計と将来の見通しを並べたうえで決まります。売却に傾くなら、いまの家がいくらでどのくらいの期間で売れそうかを先に把握しておくと、判断の土台が定まります。

売却額と売れるまでの期間の見込みがつかめれば、控除にこだわるべきかどうかも判断しやすくなります。複数の会社の査定を見比べることで、その見込みの精度を上げられます。

まとめ:転勤の住宅ローン控除は「誰が住むか」で決まる

転勤で住宅ローン控除がどうなるかは、その家に誰が住むかで決まります。家族が残れば続き、誰も住まなくなれば止まり、戻れば残った期間ぶんを再開でき、売れば終わります。

止まる間も控除期間は進んで延長されず、再開には転居前の届出と確定申告が欠かせません。制度の損得に加え、二重負担や戻れる見込みも含めて方針を決めることが大切です。

売却も視野に入るなら、いまの家がいくらで売れそうかを知ることが判断の出発点になります。複数社の査定を見比べたり、専門家に相談したりして、自分に合った進め方を確かめてみてください。