不動産売却で測量が必要なのはどんな時?重要性から費用など網羅解説!

不動産売却で測量が必要なのはどんな時?重要性から費用など網羅解説!
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ライター

河野陽炎

自分の不動産(家や土地)について、

「どこまでが私の土地?どこからがお隣さんの土地?」
「公道と私有地の境目はどこ?」

と聞かれても、すぐに分かるケースと分からないケースがあります。今まであまり気にしていなくて、「多分このあたりが境界かな」という人もいるかもしれません。

土地の取引をするときは、隣家・隣地との境界線を確定させておくことが大切です。そうしなければ、知らず知らずのうちに、ほかに所有者がいる土地まで売却してしまうなどのトラブルが起きてしまいかねません。

「売主が取引できる範囲はここからここまで」と確定させてから売却を進めましょう。

今回は実際の測量の流れ、かかる時間や費用、注意するべきポイントなどをご紹介します。

ぜひ、皆さんの不動産売却にお役立てください。

測量の基礎知識

そもそも「測量」とは、何をどのような目的で調べるのでしょうか。

まずは測量に関する基礎知識を確認しましょう。

境界確定測量

土地の境界を確定するための境界確定測量は、隣の土地が「民有地」と「公共用地」のどちらなのかで大きく2つにわかれます。

民有地境界確定測量

「どこからどこまでが、売主の土地か」を明確にするために行う測量のうち、隣の土地が民有地の場合には「民有地境界確定測量」を行います。

民有地境界確定測量が必要なケース

  • 土地を売却するので、隣地との境界を明確にさせたい場合
  • 相続などで土地を分割したり、相続税の物納をしたりする場合
注意!隣家の許可を忘れずにとる

現地における測量作業を始める前には必ず隣地の所有者に挨拶をし、協力をお願いしなければなりません。

ちなみに、土地家屋調査士事務所に測量を依頼すれば、多くの場合、事務所側で隣地への挨拶や許可取りを行ってくれます。不安な場合は確認しておくとよいでしょう。

公共用地境界確定測量

境界を明らかにしたい土地が、公共用地(道路など)と接している場合の測量を「公共用地境界確定測量」と呼びます。

公共用地境界確定測量が必要なケース

  • 土地を売却する場合で、公共用地との境界を明確にさせたい場合
  • 相続などで土地を分割したり、相続税の物納をしたりする場合

土地の現況について知るための測量

土地の方角や高低差、面積などを正確に把握するための測量が行われます。

現況求積測量、現況平面測量

土地の間口、奥行き、敷地の形状や面積などを調べます。

新築の建物を建てる場合は、土地の間口の広さ、接道状況、セットバックの必要性、面積などを算出し、どのくらいの大きさの建物を建てることができるかを計算します。

高低測量

高低差がある土地において、その角度がどれくらいあるのかを調べます。

真北測量

日照制限にかかわる調査です。太陽観測を行い、どの方向が北なのか(真北)を求める方法が一般的です。

点検測量

土地や建物の買主が、売主から提示された測量図が本当に正しいかを確認するための測量を行うことがあります。

法律上「売主が測量をする責任」はない

実際に土地の状況や隣地との境界について正確に知るためには、さまざまな技術や方法を組み合わせて測量を行うことになります。

また、境界確認をおこなう際には、隣地の所有者が立ち会う場合があります。

さらに、土地の所有者が遠く離れて暮らしていたり、道路だけでなく用水路にも接していたりする場合には、市役所関係者や水利組合の立ち会いが必要です。

それなりの時間と労力をかけ、かつ、近所の人に気をつかいながら行う測量は、絶対に必要なものなのでしょうか。

実は「不動産売却をするなら必ず測量をしなければならない」という法的な決まりはありません。

測量を行わずに土地を売却しても、そのこと自体は何の罪にも問われないのです。

しかし、境界をあいまいな状態にしたまま売却を行うことは、のちに大きなトラブルを引き起こす可能性があります。そのようなリスクを回避するために、測量が行われるのです。

登記簿の「公簿面積」で十分と考える買い手も

登記簿の表題部に表記されている「公簿面積」をもとに、測量をおこなわずに取引を行う方法があります。

これは、売主・買主の双方が納得し、同意した場合に可能となります。

ただし、「公簿面積」は明治時代に測量されたものを引き継いでいるケースが多々あります。

そのため、現代に実測した場合の面積とは異なる数値が表記されていることもありえるのです。

測量をできる限りしたほうがいいケース

ここからはできる限り測量を行うべきケースを紹介します。

分筆して売却するとき

これまで1つの土地として登記されていた土地を分筆して複数にわける場合は測量をしなければなりません。

これまではひと続きだった土地に新たに境界を設けるのです。よって、測量によって境界確定をおこない、分筆の登記手続きをしてから売却することになります。

境界杭やフェンスなどがない土地

境界杭やフェンスが設けられておらず、一目ではどこが境界か分かりづらい土地は、測量をおこなって境界を確定するべきです。

土地単価が高い地域

土地単価が高い地域では、ほんの少し土地の面積が異なるだけで、土地の売買価格も大きく変動してしまいます。

そのため、測量をおこなって正確な土地の面積を確定することが大切です。

逆に、土地単価が低い地域で、また、土地の面積が広い場合には、測量をせず、公簿面積をもとに売買することがあります。

境界のズレが原因のトラブルが起こりづらいことや、面積の広い土地の測量には時間や費用がかかることが理由です。

土地の測量には時間がかかる

売却予定の土地が上記に該当する場合、測量を検討することになります。

しかし、測量は時間もお金もかかります。

実際、測量にはどのくらいの時間や費用がかかるのか紹介します。

測量には3~4ヶ月を見込んでおく

測量は土地家屋調査士に依頼します。測量を依頼してから境界が確定するまでには、およそ3~4ヶ月かかると見込んでおきましょう。

ただし、境界は持ち主だけが宣言すればいいというものではなく、隣地の所有者にも何か言い分があるかもしれません。

境界が確定していない隣地の所有者が承諾してくれない場合は、境界確定までより時間がかかることになります。

測量を依頼するタイミングは「できる限り早く」

土地の境界に関するトラブルが起こりそうな場合は、売却の予定があるなしにかかわらず、思い立ったときに測量を依頼し、境界を確定しておきましょう。

不動産売却を考え始めたら、できる限り早めに測量を依頼したほうが良いです。先ほど説明したように、隣地の所有者も関係してくることなので、思うように進まない可能性もあるためです。

なお、境界が確定していない段階で、不動産会社に査定を依頼することも可能です。不動産会社が土地家屋調査士を紹介してくれて、測量を進める手伝いをしてくれる場合もあります。

土地の境界が確定しておらず、土地家屋調査士の心当たりがない場合は、親身に相談にのってもらえる不動産会社とともに、測量を進めていきましょう。

今すぐには不動産売却を考えていないという場合でも、将来の相続時にはお子さんやお孫さんが土地境界に関するトラブルに巻き込まれる可能性があります。

相続対策を考え始めた時点で測量を検討してください。

測量にかかる費用は35~80万円

あくまで参考数値ですが、100平方メートル以下の土地での測量にかかる費用を紹介します。

費用の目安(100㎡以下の土地)

  • 官民査定なしの場合…35万円から45万円
  • 官民立ち会いありの場合…60万円から80万円

しかし、測量にかかる費用は、その土地にまつわるさまざまな条件によって変わります。

例として、以下のような要因で測量費用は変わってきます。

費用に影響する主な事柄

1.土地の面積
面積が広い土地のほうが、測量費用は高額になります。

2.接道状況
土地が何方向で道路に接しているのか、その道路が建築基準法上の道路であるか、などの条件によって費用は変わります。

3.接している隣地の数
境界確定の際には、隣地の所有者に立ち会ってもらうことが必要です。そのため、何件の隣地と接しているかに応じて、測量費用も変わります。

4.公道が境界確定しているかどうか
公道が境界確定しているかどうかによって、測量費用も変わります。

5.登記をするかどうか
土地の分筆登記や地積更正登記をする場合は、登記費用も発生します。

以上のように、さまざまな条件に応じて測量費用は変わるので、一概に「このくらい」とは言えない現実があります。

測量費用を負担するのは「売主」が多い

測量費用を負担するのは、売主であることが多いです。

ただし、どちらが負担すべきであるという法的な決まりはないので、話し合いで決定することができます。

とはいえ、「ここからここまでの土地を売ります」と確定していない状態では、買主からすれば不安な気持ちを覚え、契約にも前向きな気持ちになれないかもしれません。

買主の不安を解消するため、そして後のトラブルを防ぐためにも、売主が費用負担をしてでも早めに測量に取りかかるとよいでしょう。

土地測量の流れ

土地家屋調査士に測量を依頼した場合、どのような流れで進んでいくのかを時系列で紹介します。

1.土地家屋調査士に測量を依頼

不動産売却の相談をしている不動産会社で土地家屋調査士を紹介され、そこに依頼するケースが多いです。

ただ、売主自らが土地家屋調査士を探して依頼することもできます。

2.事前調査

土地家屋調査士が事前に調査をおこないます。

資料と現地の両方でしっかり下調べがされます。

資料による調査

土地家屋調査士は、法務局や役所でさまざまな書類を取得します。

取得する書類は、公図、登記簿謄本、地積測量図、周辺で過去に行われた境界確定資料などです。

現地調査

土地家屋調査士が現地に出向き、土地の実際の状況を把握します。

これらの調査をもとに、測量にかかる費用の見積もりが算出されます。

3.測量前の近隣への挨拶など

現地で実際に測量をおこなう前に、土地家屋調査士が隣地の所有者に挨拶をし、測量の趣旨を説明して協力を依頼します。

境界確定の際には、隣地の所有者に立ち会いをお願いしなければなりませんので、事前に理解を得ておくことが大切なのです。

4.現地での仮測量、仮杭の設置

土地家屋調査士が現地で仮測量を行い、その結果を分析・検討して、図面を作成します。

5.隣地との境界確認

土地家屋調査士が日程の調整をして、官民や隣地の所有者に現地に集まってもらい、境界確認をして、境界確定承諾書に署名、捺印をしてもらいます。

道路を挟んで隣接する土地の所有者にも、立ち会いと承諾を依頼しなければならない場合もあります。

その後、関係者全員からの承諾を受けて、はじめて境界が確定します。それを受け、土地家屋調査士は境界を示す杭(標)を埋設します。

6.確定測量

土地家屋調査士は確定測量を行い、図面の作成や、登記申請に必要な書類の作成、依頼者に測量結果を説明するための書類などを作成します。

7.法務局への申請

土地家屋調査士は法務局に登記申請を行います。

以上が測量の大まかな流れです。

測量費用や時間がかさみがちな事例

測量費用は、土地のおかれている状況によって変わります。

費用がかさみがちな場合とはどのようなケースなのか、主な事例を紹介します。

広大地や不雑な地形など土地の問題がある場合

土地の面積が広い場合にはそれだけ人手も必要となり、費用もかさみます。

また、広さとは別の要素も存在します。

このような場合にも、費用はかさんでしまうでしょう。

資料が不足している場合

資料や書類が少ない場合や、古い資料しか出てこないなどの場合も、測量費用がかさむことがあります。

隣接地と紛争が生じているなどの場合

既に紛争が生じている、裁判所が介在しているといった土地の測量は、費用がかさむ傾向があります。

土地境界に関するトラブルが起こってしまったら

隣地との境界トラブルがどうしても解決できそうにない場合は、下記のような解決方法があります。

ADR境界問題解決センターに相談する

土地家屋調査士会が運営する「境界問題相談センター」に相談する方法があります。

境界問題相談センターは、土地家屋調査士と弁護士が調停人となり、紛争当事者の間の話し合いを取り持ってくれる機関です。

全国の各都道府県に設置されています。

※参考リンク:「境界問題相談センター(日本土地家屋調査士会連合会ウェブサイト)

筆界特定制度を利用する

筆界特定制度とは、実地調査や測量などのさまざまな調査を行った上で、筆界特定登記官が現地において境界を明らかにするという制度です。

裁判を起こすことなく、隣地との境界に関するトラブルを解決できる可能性があります。詳しくは、以下のページをご覧ください。

※参考リンク:「筆界特定制度について(法務省ウェブサイト)

境界確定訴訟を起こす

裁判に訴えて境界を確定する方法もありますが、時間や費用がかかる上、隣地の所有者とトラブルになるおそれもあります。

あくまで最後の手段と考えるのがよいでしょう。

まとめ

以上、測量についてご紹介してきました。不動産売却前に測量をすること、境界を確定しておくことの重要性について、お分かりいただけたでしょうか。

測量には30万円以上もの費用と、3~4ヶ月という時間がかかります。できるだけ早く依頼し、不動産売却に差しさわりがないようにしておきましょう。

法的には「売主が測量費用を負担しなければならない」という決まりはありませんが、「どこからどこまでを、売却してもらえるのか?」ということがあいまいなままでは、買主としては取引に前向きになれないかもしれません。

隣地の所有者にも協力をお願いしなければなりませんし、隣地との紛争がある土地を買いたいと思う人は、限られてしまいます。

測量の前後に、隣地の所有者との関係を良好に保っておくことも、スムーズな不動産売却のために大切です。

執筆者の河野陽炎さんの写真

ライター

河野陽炎

保有資格:3級FP技能士、不動産実務検定1級合格者など(合計25の資格を保有)

大阪市立大学大学院にて数学を専攻(修士(理学))。金融、経済、保険などの記事を手がける。次々と発売される金融商品や保険商品、改正される法律などが、私たち生活者の1人1人にどう影響を与えるかという視点を大切に執筆活動を続けている。趣味はディンギーヨット、文楽・伝統芸能鑑賞、怖い話とウルトラマンの研究。