不動産売却は注意事項がたくさん!売主なら知っておくべき全情報

不動産売却は注意事項がたくさん!売主なら知っておくべき全情報
執筆者の河野陽炎さんの写真

ライター

河野陽炎

国土交通省は「不動産トラブル事例データベース」を公開し、これまで実際に発生した不動産取引のトラブル事例を参照できるようにしています。

※参考サイト:国土交通省「不動産トラブル事例データベース

このことは、不動産トラブルがそれだけ多発していることの表れともいえるでしょう。

不動産の売買は、一生に何度も経験する人のほうが少なく、誰もが不慣れな状態で取り組まなければならないことです。そして、売買にあたって動くお金の額が大きいことから、いったんトラブルが起こると解決まで長引く可能性もあります。

とはいえ、「守るべきポイント」や「注意すべきポイント」を理解し、防止策を講じることでトラブルを回避できます。

不動産売却でできるだけトラブルを起こさず、スムーズに取引を進めるためのポイントをご紹介しますので、参考にしてください。

注意①登記簿などで権利関係・登記状況を確認すること

どのような売買でもそうですが、売り手が自分の商品について理解しないまま売ってしまうと、買い手はどのような商品なのかが正確に把握できません。

これでは、容易にトラブルにつながってしまいます。

不動産には見た目の問題だけでなく、抵当権や所有権などの「権利」を誰が持っているのかという問題も関係してきます。

権利関係も含めた不動産の情報と状態について、まずは売主が把握しておきましょう。

土地の権利関係を確認する

不動産の権利関係は、登記簿で調べることができます。

登記簿は法務局に申請して取り寄せることができます。オンラインによる交付請求も可能で、自宅のパソコンで、平日は夜21時まで行うことができます。

※参考サイト:法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です

不動産に関わる権利の例として、

があります。

登記簿の「甲区」には所有権に関する事項が、「乙区」には所有権以外の権利に関する事項が記載されています。どちらも必ず確認しましょう。

共有名義の土地や建物を売却するときは、共有者全員の合意を得る必要があります。また、抵当権が設定されている場合には、債権者との調整をしなければなりません。

権利関係については必ず確認し、売却前に必要な対応をしておきましょう。

増築後に登記していないなど未登記部分がないかを確認

建物の増築をしながら未登記の状態となっている物件は、そのまま売却するとトラブルを引き起こす可能性があります。

「未登記のままである」ことを買主に説明し、納得してもらった上で売却するという方法もあるのですが、買主が納得してくれる可能性は低いでしょう。

また買主が住宅ローンを利用したい場合、「未登記部分を登記すること」が住宅ローンを利用する条件とされることがあります。

建物表題変更登記を売主が行って、売却がスムーズに進むようにしておくと、買主も購入に前向きな姿勢になるでしょう。

注意②売主は土地・建物の瑕疵担保責任を負う

土地や建物に「瑕疵(かし)」があった場合、売主はその修復費用を負担しなければなりません。

「売主は買主に対して、土地・建物の瑕疵担保責任を負う」という考え方です。

修復費用を負担する方法としては、

  • 瑕疵(かし)を修復してから売却する
  • 修復費用相当額を不動産の売却予定金額から差し引いた金額で売却し、修復は買主側でおこなってもらう

などの選択肢があります。

建物の瑕疵や老朽化について確認を

平成30年4月1日から施行される「宅地建物取引業法(宅建業法)の一部を改正する法律」の改正内容には「インスペクション(建物状況調査)」の活用が盛り込まれています。

インスペクションとは、建物の雨漏りやひび割れなどの瑕疵の状況について、国土交通大臣の定める講習を修了した建築士が調査を行うというものです。

詳細は国土交通省の資料「建物状況調査(インスペクション)を活用しませんか?」にて解説されています。

※参考サイト:国土交通省「建物状況調査(インスペクション)を活用しませんか?

インスペクションには時間や費用がかります。

しかし、建物の老化・劣化・不具合について把握した上で売却できるというメリットがあります。ぜひ、ご活用ください。

注意③土地の境界を明確にする必要がある

土地の所有をめぐるトラブルを避けるためにも、隣地の所有者との間で土地の境界確認を行い、「どこからどこまでを売却するのか?」を明確にしておく必要があります。

土地家屋調査士に依頼して、境界確定測量を行い、コンクリート杭等の永久境界標を設置し、境界確定図面を作成してもらいましょう。

注意④不動産売却には費用がかかる

不動産売却によって得たお金がすべて自由に使えるようになるのではなく、売却のためにさまざまな費用がかかることを考慮して資金計画を立てましょう。

物件の仲介手数料

不動産売却にあたり、仲介を依頼した不動産会社へ支払います。

抵当権抹消にかかる費用

住宅ローンが残っている不動産を売却する場合は、売却と同時にローン残債を支払い、抵当権を抹消してもらうことになります。

抵当権抹消のための登記には登録免許税の支払いが必要です。

司法書士に手続きを依頼する場合は、その費用もかかります。

測量の費用

土地家屋調査士に測量を依頼する場合は、その費用と時間がかかります。

古い家を解体する費用

古い家を解体し、更地にして売却する場合は家屋の解体費用がかかります。

不用品の処分費用など

古い家に残された不用品を処分する費用も、考慮に入れておきましょう。

注意⑤不動産の売却には税金がかかる

不動産売却はお金が動きます。

お金が動くときは、税金がかかる可能性について考えなければなりません。

印紙税

契約書に記載された金額に応じて、印紙税をおさめることになります。

収入印紙を契約書に貼付して印鑑を押す形で納税します。

所得税

不動産売却だけでなく、個人の資産を譲渡して利益がでたときは、その利益は「譲渡所得」として所得税と住民税が課税されます。

相続した物件を売却する場合の特例(節税)

実家が空き家となって相続人がその実家を売却する場合には、譲渡所得から最高3,000万円を差し引くことができるという「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が設けられています。

この特例は、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に譲渡する物件について適用されます。

※参考サイト:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

注意⑥不動産会社選びは査定価格だけで判断してはいけない

不動産を売却するにあたり、もっとも気になるのは「どのくらいの価格で不動産が売れるのか?」ということでしょう。

ここで重要な注意点です。

「高い査定価格」に釣られて、それだけで不動産会社を選んではいけません。

結論から言うと、以下のポイントをぜひチェックするようにしてください。

不動産会社選びで見るべきポイント

  • 不動産会社がどのような根拠をもとに、査定価格を算出したのか?
  • 査定価格についての説明に納得ができるか?

価格査定とは

土地や建物がどのくらいの価格で売却できるかについて、不動産会社が周辺の相場などの情報をもとに評価することを「価格査定」といいます。

簡易査定・机上査定

簡易査定・机上査定とは、物件を実際に訪問するのではなく、周辺の相場などを調査し、査定価格を導き出す方法です。

簡易査定・机上査定で参考にするデータ

  • 周辺の類似物件の売出価格や成約価格
  • 不動産市場の動向

詳細査定・訪問査定

詳細査定・訪問査定は不動産会社の担当者が実際に物件を訪れ、より精度の高い査定価格を算出する方法です。

詳細査定・簡易査定で参考にするデータ

  • 部屋の間取り
  • リフォームの必要性
  • 道路と敷地の位置関係
  • 境界に関する状態

査定価格を出してもらったら必ず根拠を確認する

不動産会社がどのような根拠にもとづいて査定価格を算出したのか、説明してもらいましょう。

不動産会社の説明が納得いくものかどうか、きちんと理解できるように説明してくれるのかを確認することが、不動産会社との相性をチェックするために、重要です。

高い査定価格を出す会社が優良とは限らない

大切な不動産を手放すのだから、できるだけ高い価格で売却したいという気持ちは理解できます。

ただ、高額の価格査定を出す不動産会社が必ずしも良心的で、売主のために熱心な会社とは言い切れません。

なかには、媒介契約を結びたいために高額の査定を出す不動産会社もあります。

高すぎる売却価格で不動産を売りに出しても、買い手がなかなかつかないという場合もあり、結局は売主のためにならないのです。

以上を踏まえると、重視するべき点は先述した以下のポイントとなります。

不動産会社選びで見るべきポイント

  • 不動産会社がどのような根拠をもとに、査定価格を算出したのか?
  • 査定価格についての説明に納得ができるか?

注意⑦不動産会社と媒介契約を結ぶ必要がある

不動産売却のパートナーとして共に歩む不動産会社を決めたら、媒介契約を結びましょう。

3種類の媒介契約がある

売主がどのように売却活動を進めていきたいかによって、最適な媒介契約は変わってきます。

3種類の媒介契約の特徴を知り、売主の方針に合う方法を選びましょう。

専属専任媒介契約

1社の不動産会社だけに不動産売買の仲介を依頼する方法で、ほかの不動産会社に仲介を依頼することはできません。

売主の親戚や知人が売主に直接「買いたい」という場合でも、専属専任媒介契約を結んでいる不動産会社を通して売買の取引を行う必要があります。

3つの媒介契約のなかで、不動産会社からの拘束力がもっとも強い方法と言えるでしょう。

専任媒介契約

専属専任媒介契約とよく似ています。

異なる点は、親戚や知人など売主自身が見つけた買い手には、不動産会社を通すことなく契約することができることです。

一般媒介契約

複数の不動産会社に同時に仲介を依頼することができます。

売主が自分で見つけた買い手にも、不動産会社を通すことなく売却を行えます。

これらの媒介契約を結ぶと、今後の不動産売却の進め方や、不動産会社が提供するサービス内容などが明らかになります。

媒介契約を結ぶ前に、どのような点を確認しておくべきか、ご紹介します。

希望条件ははっきりと伝える

不動産売却をどのように進めたいかは売主が決めて、不動産会社に伝えなければなりません。

たとえば、不動産を手放すにあたって、近所の人に知られたくないとか、不動産を明け渡すまでにどのくらいの時間がかかるといった事情を不動産会社に伝えましょう。

売主の事情に配慮した売却活動を進めてくれるかどうかが、信頼できる不動産会社かを判断するためのポイントです。

不動産会社が行う仲介業務の内容を確認する

不動産会社がどのようなサービスを提供してくれるのかをきちんと確認しましょう。

たとえば、「売却に出していることを、近所の人に知られたくない」という事情があるときは、広告を控えるという方法を選んでくれるのかどうか確かめましょう。

また、チラシやインターネットなどの広告にどのような内容が盛り込まれるのかについて、も確認しましょう。

専任媒介契約など、一定期間ごとに不動産会社が売主に業務報告をしなければならない義務がある契約方法もあります。

このときも、具体的にどのような報告が受けられるのか、その後の売却活動に活かせるような内容なのかを確かめておきましょう

媒介契約書の内容をチェックする

媒介契約の内容は媒介契約書に明記されますが、後から「こんなことは聞いていない」などの行き違いが起こらないよう、すみずみまで確認しましょう。

依頼者の義務について

不動産会社との媒介契約を結ぶと、依頼者にも一定の義務が生じます。

依頼者がしなければならないことの一例

  • 売却する物件に関して、売主自身が保有している情報を提供すること
  • 印鑑証明など公的書類の取得
  • 買主が測量を求めてきた場合の対応
  • 売買完了後に売主自身の責任によって生じたトラブルへの対応

媒介契約書を確認して、売主がしなければならないことについても必ず確認しましょう。

媒介契約の解除について

専任媒介契約など、他社への仲介依頼ができない契約を結んでいる状態で、「どうも不動産会社のことが信頼できなくなった」というときには契約の解除もできます。

しかし、契約には「契約期間」が存在します。期間満了まで待って契約更新をしないという選択肢も、頭の片隅に入れておくべきでしょう。

媒介契約の解除には原則として違約金などはかかりませんが、不動産会社が負担した広告宣伝費などの実費を請求される可能性もあります。

実費を請求されたら、「どのような費用をなぜ請求されたのか」を確認し、主張するべき部分はきちんと主張しましょう。

ケース別チェック!特定条件下の不動産を売却する際の注意点

住宅ローンの残債がある不動産を売却する場合

金融機関で住宅ローンを利用するときは、購入する住宅に「抵当権」が設定されます。

簡単に言えば、住宅ローンの利用者が支払いを継続できなくなったとき、抵当権者が住宅を処分してしまうことができる権利が抵当権です。

もし、住宅を売却して、所有権が他の人になった場合でも、住宅ローンの返済が済んでいなければ、金融機関が抵当権を保有したままになります。

そのため、住宅ローンの残債がある不動産を売却するとき、その売却代金に加えて、場合によっては自己資金も用意して住宅ローンを完済し、抵当権を抹消してもらう必要があります。

相続した不動産を売却する場合

相続で手にした不動産を売却したい場合には、事前に行っておかなければならない手続きがあります。

相続人に名義変更をしなければならない

被相続人(親など)の名義の不動産を売却するときは、売主の名義に変更してからでなければ売却ができません。

相続人が複数いる場合は、不動産を相続人全員の名義にして売却するという方法も考えられますが、売却手続きに相続人全員が関与することになり、手続きがスムーズに進みにくくなります。

そのため、売却に関与する相続人を選び、その人だけが不動産売却の実務を行う、という形にするほうが労力を省くことができます。

遺産分割協議の段階で、税理士や弁護士に相談して、売却をスムーズに進められる形にしておきましょう。

節税できる特例を受けるには確定申告が必要

相続した不動産を売却するとき、所得税と住民税が安くなる「相続税の取得費加算の特例」という制度を利用できる場合があります。

以下、国税庁ウェブサイトに明記されている「特例を受けるための要件」です。

相続税の取得費加算の特例を利用できる要件
イ 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
ロ その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
ハ その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

※引用元:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

なお、この特例を受けるには、確定申告を行う必要があります。

相続税に関する内容も併せて、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

賃貸に出している不動産を売却する場合

賃貸に出している不動産を売却する方法は、大きく分けて2つです。それぞれの方法で注意点があるので確認しましょう。

オーナーチェンジする方法は、内覧が困難

入居者には居住してもらいながら、投資用不動産として売却する「オーナーチェンジ」という方法があります。

すでに入居者がいるということは、家賃収入がすぐに得られるということなので、不動産投資家に歓迎されることも。

ただし、入居者がいる状態で買主に内覧をしてもらうことが難しいことや、オーナーチェンジ後はその旨の通知を行い、入居者に不安を与えないようにすることなどには注意しましょう。

空き家にしてから売却する方法は、売主の負担が大きい

入居している人にはいったん退居してもらい、空き家にしてから売却する方法があります。

空き家にすることで、居住用、投資用などさまざまな用途での売却ができるようになり、購入希望者の幅が広がる点が大きなメリットです。

いっぽうで、退去してもらうための交渉を行わなければならず、立ち退き料や引っ越し費用などの負担が、売主側に生じる点には注意しましょう。

立ち退き料を払うことがある

入居者に立ち退きの意思がない時期に立ち退いてもらう場合は、立ち退き料を支払うことも含めて、交渉を行う方法があります。

立ち退き料には法的な決まりや、相場というものはありませんので、入居者との交渉により決定します。

引っ越し費用を負担することがある

もともと引っ越しの意思はない入居者に引っ越しをお願いすることになるので、売主側が引っ越し費用の負担を申し出ることで交渉がスムーズになることもあります。

まとめ

不動産売却は一生に何度も経験することではありません。

しかし、大きな金額が動く大変な取引です。

納得のいく結果を得るためにも、以下の点を事前に注意点を確認しましょう。

記事のおさらい

  • 売却する物件の築年数、瑕疵などの状況や、登記簿に記載されている権利関係などを把握しましょう。

  • 不動産売却には不動産会社に支払う手数料や抵当権抹消などのかかる費用、税金などもかかります。売却による利益だけでなく、費用も考慮して資金計画を立てましょう。

  • 「不動産がどのくらいの価格で売れるのか」は気になることですが、不動産会社と契約するときは、査定価格の算出根拠について納得のいく説明してくれる不動産会社を選びましょう。

  • 契約する不動産会社を決めたら、どのように不動産売却を進めたいかに合わせて、媒介契約の種類を選びまましょう。

  • 不動産会社と契約をする前に、希望条件をはっきち伝え、媒介契約書も納得がいくまでチェックしてから、正式に契約を結びましょう。

執筆者の河野陽炎さんの写真

ライター

河野陽炎

保有資格:3級FP技能士、不動産実務検定1級合格者など(合計25の資格を保有)

大阪市立大学大学院にて数学を専攻(修士(理学))。金融、経済、保険などの記事を手がける。次々と発売される金融商品や保険商品、改正される法律などが、私たち生活者の1人1人にどう影響を与えるかという視点を大切に執筆活動を続けている。趣味はディンギーヨット、文楽・伝統芸能鑑賞、怖い話とウルトラマンの研究。