不動産売却は更地にしてから?古い建物を残すかの判断基準を解説

2018.09.14投稿 不動産売却は更地にしてから?古い建物を残すかの判断基準を解説

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ライター

河野陽炎

2015年ごろから、ニュースや新聞で「地価の下落が止まった」「住宅地の地価が上昇に転じている」という情報が取り上げられるようになりました。

平成30年の地価公示結果によると全国の住宅地の平均変動率が10年ぶりの上昇となり、商業地は3年連続の上昇、工業地でも2年連続の上昇となったことが報じられました。

地価上昇の機運に乗って、思い切って不動産を手放したいと考える人もいるでしょう。

とはいえ、次のようなお悩みはありませんか?

この記事ではこんな悩みを解決します!

  • 「親から相続した不動産の売却を考えているけれど、かなり築年数の経った家がそのまま残っている。本当に買い手がつくだろうか?」
  • 「更地にすると税金がかかるという人がいる一方、更地のほうが買い手がつきやすいという人がいて、何を信じればいいのかわからない

果たして、古い建物を残したままで売却するほうが得をするのでしょうか?

それとも更地に変えてから売却するメリットのほうが大きいのでしょうか?

その判断基準についてご紹介しますので、よりメリットが大きい方法をお選びください。

土地を更地にしてから売却するメリットとデメリット

更地にしてから売却するメリット・デメリットは以下のとおりです。

お金はかかりますが、更地にすると売却しやすくなります。

  • 更地のほうが買い手がつきやすい
  • 土地の埋設物などについて事前に確認することができる
  • 古い建物の取り壊し費用を負担しなければならない

それぞれの要素について、詳しく説明していきます。

メリット1:更地のほうが買い手がつきやすい

古い家が残ったままの「空き家つき土地」に比べて、更地は買い手がつきやすくなる可能性があります。

理由1.買主にとって便利

すでに住宅やアパート、オフィスなどが建てられている土地は、購入後の使い道が限定されます。

しかし、更地ならば、買主の用途に合わせて新しい建物を建てることができます。つまり、更地のほうが買主にとって便利なのです。

買主が古い建物を取り壊す選択肢もありますが、時間・労力・費用がかかってしまいます。買主にとっては「せっかく購入した土地をすぐに活用できない」という事態になるかもしれません。

理由2.古い建物による悪印象を避けられる

建物の築年数がかなり経過してしまうと、建物の見た目が悪化します。

また、古さゆえに耐震性や安全性が低いという印象を購入希望者に与える可能性もあります。

上記のような理由で、更地のほうが買い手が付きやすいと言えます。

もちろん、買主の希望、建物の外観や安全性などにもよります。

しかし、買主が自由に用途を決めることができて、建物を解体する労力や手間が必要ない更地のほうが、買い手がつきやすい場合もあるのです。

メリット2:土地の埋設物などについて事前に確認することができる

瑕疵担保責任という言葉をご存知でしょうか。

瑕疵によるトラブルを防ぐために、売却前に地盤や土地の埋設物を調査しておくというポイントがあります。

更地にすることによって、その調査が進めやすいというメリットがあるのです。

なぜ埋設物などを事前に確認するのか

なぜ調査するのか、その理由は「不動産を売却する売主は、買主に対して土地・建物の瑕疵担保責任を負う」ことにあります。

売主を信頼して土地や建物を買ったものの、地盤が軟弱であったり思わぬ埋設物などが存在したりして、地盤改良や埋設物の撤去などの費用がかかってしまう可能性があります。

そのような費用については売主が負担すべきである、という考え方が「売主は買主に対して瑕疵担保責任を負う」ということです。

費用負担は避けたいものですよね。仮にお金に余裕がある場合でも、「売主が費用を負担すれば、すべて解決」という単純な問題ではありません。

埋設物などがあった場合、買主は「購入後、すぐに使えると思っていた土地や建物を、何か月も使えない」という問題を抱えることになります。「ほかにも何かあるのではないか?」と疑心暗鬼にもなるでしょう。

売主も、地盤の状態や埋設物について知らなかったとしても、あとから責任を追及される可能性があります。

そのようなトラブルを防ぐために、不動産売却前に地盤や埋設物について調査しておくことが重要です。

「空き家つき土地」のままでは進めにくい調査も、更地にすることで進めやすくなるのはメリットです。

デメリット:古い建物の取り壊し費用を負担しなければならない

空き家つき土地を更地に変えるためには、建物の取り壊しを行わなければなりません。

そのためには費用や時間、労力がかかってしまいます。

築年数が浅く、まだまだきれいな建物であれば、取り壊さなくても「マイホームが欲しい」という人の興味を惹くことができます。この場合は、更地に変えるよりも「建物を売る」と考えるほうが良いかもしれません。

一方で「建物があることが、どうも買い手に敬遠されているようだ」と考えられるときは、取り壊し費用を負担してでも、更地に変えると良いでしょう。

古い建物を残したままで土地を売却するメリットとデメリット

更地にせず、建物付きで売却するメリット・デメリットは以下のとおりです。

お金はかかりますが、更地にすると売却しやすくなります。

  • 建物が存在すると、買い手が住宅ローンを利用できる可能性がある
  • 固定資産税の負担をおよそ1/6に抑えられる
  • 建物の瑕疵担保責任が課される
  • 更地に比べて買い手がつきにくい場合も

それぞれの要素について、詳しく説明していきます。

メリット1:建物が存在すると、買い手が住宅ローンを利用できる可能性がある

古い建物を残しているとローンを利用しやすくなります。

買主は不動産購入費用をすべて現金で用意できるとは限らず、住宅ローンを利用したい場合もあります。

しかし、土地だけの状態で住宅ローンを利用すると、金融機関での手続きが煩雑になる場合もあります。

買主の事情によっては、古い建物を残しつつ、ローンを利用するのもよいでしょう。

メリット2:固定資産税の負担をおよそ1/6に抑えられる

土地や建物を所有していると固定資産税がかかります。

住宅用地は、固定資産税の計算上の特例が適用され、税金を抑えることができます。

しかし、建物を取り壊して更地にしてしまうと特例を受けられなくなり、固定資産税額が高くなります。

更地の売却までに時間がかかった場合、固定資産税の負担額がかさんでしまうのです。

更地にする前に、空き家つき土地としての売却が本当に難しいかどうかを考えましょう。更地にした場合にどれくらい固定資産税が増加するのかも考慮に入れて、資金計画を立ててください。

デメリット1: 建物の瑕疵担保責任が課される

先にも触れましたが、不動産売却をするとき、売主は買主に対して瑕疵担保責任を負うことになります。

更地の場合は、土地に関しての瑕疵担保責任があるだけです。

しかし、空き家つき土地として売却をすると、建物の瑕疵担保責任も負わなければなりません。

スムーズな取引をするために、

などの対策をとりましょう。

デメリット2:更地に比べて買い手がつきにくい場合も

建物が建てられている土地は、建物の形状や種類によって、使い道が限定されてしまう場合もあります。

また建物の状態によっては、取り壊しのための時間や費用がかかります。買主にとっては、せっかく購入した土地を、すぐに活用できないことにもなりかねません。

そのため、更地に比べて買い手がつきにくい場合もあるのです。

判断基準を紹介!更地にしてから売却すべきケース

空き家つきの土地を更地に変えてから売却するほうがいいか、それとも建物を残したまま買い手を探すほうがよいか。

その判断基準について、解説していきます。

ケース1.建物の築年数が長く価値が低くなった場合

建物の築年数が経ちすぎている場合は「建物の価値が小さい」ため、解体して更地にすることを検討しましょう。

建物にはその構造や用途によって、法定耐用年数が定められています。この法定耐用年数を「築年数が経ちすぎているかどうか」の判断材料にしてください。

例)住宅用建物の耐用年数

  • 木造・合成樹脂造…22年
  • 木骨モルタル造…20年
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造…47年
  • 鉄筋コンクリート造…47年
  • れんが造・石造・ブロック造…38年
  • 金属造…19~34年(骨格材の肉厚により異なる)
※参考元:国税庁「耐用年数」より

法定耐用年数を過ぎた瞬間に、その建物に住めなくなるというわけではありません。

しかし、この期間を過ぎると、法的には建物の価値は0と考えられます。

築年数が経ちすぎて価値がほぼ0に近づいた建物ほど、買い手がつきにくくなります。解体して更地にすることを検討しましょう。

ケース2.耐震性が低い建物の場合

結論から言うと、「昭和56年6月以前に建築確認を受けた物件かどうか」が、更地にして売却するかどうかの判断基準になるでしょう。

建物を建てるときは、建築基準法にもとづく「建築確認」を受けることになっています。

これは、建物の建築前に、着工計画などが建築基準法令や建築基準関係規定に適合しているかどうかの審査を受けるというものです。

適合判断の1つに耐震基準があり、これは大震災が起こるたびに改訂されています。

逆に言うと、過去に遡るほど耐震基準はやさしいのです。

昭和56年(1981年)6月より前は、旧耐震基準による建築確認が行われていました。

現行の新耐震基準に従って建築された建物に比べて、昭和56年6月以前に建築確認を受けた建物のほうが、耐震性の面では弱い場合があります。

また、その時期に建てられた物件はすでに築年数が37年以上に達しているため、老朽化も進んでいます。

このような理由より、「昭和56年6月以前に建築確認を受けた物件かどうか」が判断基準の1つとなります。

判断基準を紹介!古い建物を残しておくほうが良いケース

逆に、建物を解体せず残しておいたほうがいい場合についても知っておきましょう。

ケース1.「古民家」として価値がある建物が残っている場合

築年数が50年を超える家は、「古民家」と呼ばれます。

古民家の中には築100年を超えるものや、地方自治体の有形文化財に指定されている物件などもあります。

近年、古民家の持つ雰囲気や美しさが1つの価値として認められるようになり、テレビや雑誌でも取り上げられています。

古民家として価値のある物件はむやみに取り壊すのではなく、古民家好きの人をターゲットに売却するという方法もあります。

また、古民家をリノベーションして、より暮らしやすく変えてから売却する方法や、買主にリフォームやリノベーションしてもらうことを前提として売却する方法もあります。

ケース2.建物の再建築が法的に難しい土地や地域の場合

建築基準法の改正以前には問題なく建物を建てることができた場合でも、法の改正によって新たに建物を建てるのが難しくなってしまうケースがあります。

この場合、いったん建物を取り壊してしまうと、もう新たな建物を建てることはできません。

古い家を解体せずに売却するほうが、買主の選択肢も広がることになるのです。

再建築が難しい土地にある家…どうアピールする?

実は、筆者自身が住む家も再建築が難しい土地に建っています。

そのことに加えて、

このような条件だけを紹介すると「誰がそんな物件を買うの?」と疑問に思われるでしょう。

でも、次の条件ならばどう感じますか?

先ほどの特徴よりも、魅力的に感じると思います。

再建築不可という条件だけで「もう買い手がつかない」と悲観することはありません。

物件のよい点を見つけると同時に、その物件に興味のある人を探しだす努力をしましょう。

建物の「解体費用」もひとつの判断材料

更地にするしないの判断材料を紹介しましたが、そのほかに「建物の解体費用」も検討したい材料です。

古い建物や耐震性などに不安がある建物を解体して、更地にしてから売却すると決めた場合は解体費用がかかります。

解体費用があまりにかかる場合には更地にしないなど、しっかり加味しましょう。

解体費用の内訳

業者に解体を依頼すると、費用がどのくらいかかるのか、見積もりを算出してもらえます。

業者ごとに費用の項目や名称が異なります。

複数の業者に見積もりを依頼して比較したい場合は、次の4つのグループに費用を分類するとわかりやすくなります。

①建物を取り壊す費用

重機あるいは手作業で建物を取り壊したり、廃材を運び出したりすることにかかる費用です。

②廃棄物処理のための費用

廃材を産業廃棄物処理施設で処理してもらうためにかかる費用です。

③付帯工事にかかる費用

周囲に破片やホコリなどが飛び散らないように養生したり、ブロック塀、浄化槽、庭にあるものを撤去したりしなければならない場合は、その費用が計上されます。

④その他の諸費用

役所へ届け出が必要なときはその費用、重機を現場まで回送したり、駐車場を借りたりするための費用などが含まれます。

解体費用に影響する要素

解体作業にかかる費用は、木造か鉄筋コンクリート造か、それとも他の構造かという建物そのものの造りによって変わります。

そのことに加え、現場までトラックや重機類を回送するための費用も、物件の位置に左右されます。

周辺環境によっては、ガードマンを配置する必要があります。

また、トラックや重機の駐車スペースが確保できるかどうか(できない場合は前面道路の使用許可申請が必要)という問題もあります。

このような事情に応じて、解体費用が異なってくるのです。

更地にせず「建物つきの土地」として販売するコツ

あえて建物を取り壊さずに売却することを決めた場合、次のようなことを心がけると、早期に買い手が見つかるでしょう。

コツ1.古い建物をリフォームする費用を売り手側が把握しておく

古い建物には、安全に暮らすための耐震補強工事や、より使い勝手をよくするためのリフォームをしなければならない場合もあります。

そのような場合、リフォーム工事にどの程度の費用がかかるのかを、売主が把握しておくとよいでしょう。

情報提供することで、買主も資金計画が立てやすくなり、購入に前向きになる可能性があります。

コツ2.「中古物件」「土地」の両方で売却に出してみる

「更地にする決心がなかなかつかない!」という場合は、「中古物件」「空き家つき土地」の両方で売却に出す方法もあります。

土地として売却する場面では、建物の解体費用がかかることも考慮に入れて、売却価格を決定しましょう。

まとめ

ここまで、古い建物を残したまま売却するか、それとも古い建物は取り壊して更地で売却するか、その判断基準についてご紹介してきました。

建物を取り壊して更地にする判断のポイントをまとめると、以下のとおりです

記事のおさらい

  • 築年数が経過しており、建物の価値が低くなっている
  • 昭和56年6月以前に旧耐震基準による建築確認を受けた建物である
  • 古民家としての価値も認められにくいような建物である
  • 建物を取り壊した場合でも再建築が可能である
  • 建物があることが、買い手がつかない状況に陥っている理由である

中古住宅としての売却が難しい場合には、建物の解体費用をかけて更地にすることで、買い手がつく可能性が出てきます。

いっぽうで、建物がなくなり更地になることで、固定資産税がかさむといったデメリットもあります。

ニーズについて調査し、資金計画も立ててから解体を始めるようにしましょう。

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河野陽炎

保有資格:不動産実務検定1級合格者、3級FP技能士、消防設備士乙種7類、応用情報技術者など、合計25の資格を保有。

大阪市立大学大学院にて数学を専攻(修士(理学))。金融、経済、保険などの記事を手がける。次々と発売される金融商品や保険商品、改正される法律などが、私たち生活者の1人1人にどう影響を与えるかという視点を大切に執筆活動を続けている。趣味はディンギーヨット、文楽・伝統芸能鑑賞、怖い話とウルトラマンの研究。